第47回 「コーデ」が気になる。
2月☆日
「ペヤング」を、初めて食べた。これ、関東ではとってもメジャーなカップ焼きそばらしいねんけど、関西ではほとんど売ってない。でも、小学生か中学生の頃、テレビ大阪(テレビ東京の系列)でたぶんCMが流れてて、「ペヤング」ってなんなんやろ、と気になってた。話のネタにもよく出てくるしね。東京に引っ越してからどこのスーパー、コンビニでも売ってて「これが噂のペヤングが~」と思いつつ非常にチープな見た目なんでちょっと勇気が必要で買ったことなかった。が、とうとう先日、最寄りのスーパーで特売やったので買った。食べた。おいしい! わたしの大好きな(15歳ぐらいまで世界でいちばんおいしい食べ物やと思ってた)「日清焼そば」(袋麺)に似た味。「UFO」より「日清焼そば」っぽい。大変ジャンクな食べ物ですが、また買ってしまいました。
2月☆日
外に出たくない寒さやけど、ファッション誌はすでに春物満載。どの雑誌見ても、今シーズンのはやりワードとして載ってるのが、「とろみ」。とろみシャツ、とろみパンツ、とろみトレンチ。柔らかい生地で「落ち感」があるものらしいのやけど、この「とろみ」って言葉、いつ誰が決めたのか気になる。数年前ならこういう質感の素材は「てろてろ」「てろりん」などと表現されてたはず。
ほかにも、「しわ感」「しゃり感」と、アイテムの固有名詞より、質感なんやなと。これは日本語に擬態語、オノマトペが多いこととも関係してると思う。
あと、ずーっと気になってんのが、「コーデ」。雑誌には書いてあるけど実際しゃべってるときには聞いたことがない。「わー、そのコーデええなあ」「今日のコーデはね」とか、ない。「デ」で切るからおかしいような気がしてきた。「コーディ」やったらけっこういけるかも。いや、無理か。
ところで、男性のファッション誌では今どんな言葉が流行ってるんですかね? 最近ちょいちょい見るのはハリウッドセレブのスナップを「コーデ」の参考にする『Safari』。確か「褪せT」(色褪せた感じに加工したのTシャツ)てのがあったような。ここの「コーデ」はハリウッドセレブが長身のええガタイで着るとかっこいいけど、そのまままねしても単にGAPっぽい人になるだけなのが難しいとこやね。
(この日記書いてから「とろみ」推しやった雑誌の次の号見たら「シャツは『とろみ』から『ベーシック』へ回帰しています」と見出しが。ファッションて難しいね!)
2月☆日
年齢が上がるごとに雑誌が選びにくくなる。
服の趣味、髪・メイクの趣味、ライフスタイル、階層(っていうか要するにお金やな)が全部一致するのがない。服が合うなと思っても、髪はゆるふわ巻きの愛されメイクやったり、文化系の記事が全然なくてひたすら外見と美容だけやったり。見て素敵な服と実際着られる服も違うし、充実してるけど「買えるか!」てものしか載ってなかったり。
30代になると、特に女子は、生活スタイルもいろいろやし(めっちゃ働いてる、そこそこ働いてる、主婦、子供いる……そういうのの組み合わせ)、ファッションも細分化していくし、雑誌に限らず「なんかしっくりくるものがない」っていう感じを持ってる人は多いんちゃうかな。
ところでみなさん『家庭画報』って読んだことありますか? 「上品な奥様」の雑誌で、一見して派手さはないので油断してしまいますが、服は基本10万円以上、「イヤリング ¥1,000,000」などとしれっと書いてあるのですよ。食べ物も旅行もすべてが「上流」。見るのはおもしろいです。
まあ、でも、高校生のとき『Olive』読んでても「こんな値段の服買えるか」と思ってたな。たまにある「チープ特集」みたいなときの値段が普通で、普段は「似て非なるもの」を探してた。
今の子はユニクロとかH&Mとかあってええなあ。
2月☆日
この冬は風邪ひかずに乗り切れそうな気がする。健康的な生活してるから、ではなくて、外に出てないからやけど。
2月☆日
『あさイチ』(NHK総合)、性同一性障害について特集してた。「FTM」の人(女性に生まれたけど男性として生きている人)が出演してたり、結婚後に性転換した人、「MTF」(男性→女性)で普通の会社で働く人の苦労や、学校での取り組みなど多角的に紹介してて、今までわからなかったことを実感できた 。
『あさイチ』のおもしろいところは、番組に送られてくるFAX・メールを疑問・否定的な意見も含めて紹介するところ。それを聞くと、世の人の生々しい考えを知ることができる。で、この日も「心と体の性別が違うなら心のほうを変えればいいのでは」ていう素朴な疑問や、もうちょっと否定的な感想もあった。
わたし自身、好奇というか野次馬的な目で見るようなところがないとは言わない。だけど、そういう人がいるんやな、そうなんやな、ってふつうに思う。
人が「つらい」「できない」と訴えていることに対して、「どういうふうに」とか理由を聞くところまではわかるけど、「つらいのはおかしい」「できないはずがない」って言うのはわからない(性同一性障害に限らず)。
「男の子なのに女の子とばっかり遊んでる」「女の子なのに男の子の服を着ようとするから心配です」っていう親からの声も結構あって、解説の専門家の人が「そういうのは子供にはよくあることなので、見守ってください。もっと年齢を重ねて本人から相談されたときに拒絶しないことが大切です」と答えてた。
その質問を送ってきた親御さんたちは、子供の頃に「男らしい・女らしいことがすんなりできへんなー」と思ったことないのかな、と、これは単純に疑問というか質問。
前にも書いたけど、言葉で表すと「男」と「女」と2種類しかないけど、ほんとはその間はグラデーションで、もちろん見た目もめっちゃ「女」で「女らしい」ことが大好きで「男らしい人が好き」っていう人もいると思うけど、いろんな人がいるし、ひとくくりにはできへん、っていうだけのことやと思うんやけどなあ。
わたしは、4、5歳から「女の子っぽいもの」がすごい嫌いで、ピンクも花柄もスカートも絶対着たくなくて、『リボンの騎士』見て「わたしも間違えて青いハート飲まされたんやなあ」と思ってた。かといって男になりたいわけでもなし、アイドルとか色気のある女優さんとか好きやけど自分がそうなりたいとは思わんし、自分てなんなんやろ、と今でもようわからんままです。
2月☆日
何日かあたたかくなって油断してたら、めっちゃ寒くなった。1月の寒かったときより寒いぐらい。寒いときは、夏に暑くなることが信じられへんくなるけど、でも今日外歩いてたら梅咲いてたし、ミモザも咲きそうになってたし、またすぐに寒かったこと忘れるような陽気になるんやろな。
プロフィール
柴崎友香(しばさき・ともか)
1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com/
権田直博(ごんだ・なおひろ)
1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:https://naohirogonda.tumblr.com/
風呂ンティア:https://frontier-spiritus.blogspot.jp/
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