よう知らんけど日記

第48回 カッパの初恋。

2013.3.29 17:54

2月☆日
急激にぬくなったり寒なったりすると、健康管理的にも困るのやけど、家にいることがほとんどの生活してると、外の気温を読み違えて薄着で寒かったりダウン着てしまって暑かったり。厚着って、暑いっていうだけじゃなくて、妙に恥ずかしい。電車の中で他にもダウン着てる人おるやんな、って確認してしまう。

3月☆日
コンサバ系ファッション誌が意外に自分に合っていたかも、という新事実の発見以来、今まで読んでなかったいろんな雑誌を買ってみてる。コンサバ系(『Domani』『Oggi』『CLASSY』『Marisol 』あたり)を読んで、実際に着られて年相応にこぎれいに見える服が載ってるという点ではとてもよい。何冊か読んでわかった特徴は①柄物がない(「おもしろい服」を着たいなどという関西人気質は通用しなさそう)、②ウエストがある(チュニックの重ね着などしない。ワンピースでもウエストマーク)、③読者層がキャリア系なので値段は高め(「クラス感がある」と言う)。
アラフォー以上が対象の雑誌になると「モテ」がそんなに重視されなくなるので(『NIKITA』とかあったけどね)、「愛され系」要素が減って、すっきりくっきりしたファッションになるのが、女子っぽいのが苦手な自分には結構いい。

3月☆日
仕事の資料としての必要もあって、赤文字系も買ってみる。『JJ』『ViVi』『CanCam』(1コはmやねんで~)とかね。この数年、表紙タイトルが赤文字じゃなくて「ピンク文字」になってるのに象徴されるように、たれ目困り顔メイクが主流の「ゆるふわ」守ってあげたい系にシフト。何ヶ月か前、「社会人の彼を作るためには」みたいな特集があってんけど、これ、不景気対策ファッション&メイクなんやなあ。「金持ち」じゃなくて「社会人」というハードルの低さに今の若い子の厳しい世間を実感したものです。
で、モデルがとにかくハーフ全盛。ハーフじゃなくてもハーフっぽい外見。特に金髪化が進行中。顔も白いし。全体にパステル化して誌面がうすーい色味。高校生ぐらいの時(約20年前)、今はモデルは外国人とかハーフやけど、10年後、20年後はきっとそういう欧米コンプレックスはそうでもなくなってるんやろうなと思ってたので、今のハーフ化は不思議な感じ(ブラジル系やフィリピン系など多様化してるのは21世紀っぽい)。しかも、昔みたいにフランス映画にあこがれて、みたいな感じではなく、とにかく見た目に特化してるような。やたらとセレブゴシップのページがあるので、よくわからんけどお金があって楽しそうな感じがええのかもしれへん。
でも、これから絶対アジア系モデルとか東洋美が来ると思うんやけどなあ、経済の勢いからして。せっかく顔も似てるから参考になることも多いんやし、もっとアジア系モデル使ったらええのになあ、と思う(中国はモデルに白人はほとんど使わないって聞いたけど、他の国は欧米コンプレックスないんかな)。基本的にモード系の雑誌が好きでずっと買ってて、最新の洋服とか作り込んだ写真とかうっとりするのやけど、モデルの日本人率は低い。パリコレとかが標準やからどうしても欧米基準になるのやと思うけど、似合う服がかなり違ってくると思う。これから先はどんな方向にいくんやろうか。

3月☆日
原宿とか渋谷に行くと、外国からの観光客が多い。一時は中国率がすごく高かったけど、最近は、シンガポールとかマレーシアかなって顔立ちも増えて、多国籍化してる印象。
明治通りの交差点で信号待ちしてたら、隣にいたのが韓国人の学生っぽい男女グループで、服装がほんとに日本の子と変わらない。韓流アイドルの男子みたいなんじゃなくて、小柄な草食男子って感じで、フェールラーベンのリュック背負ってて、おーっと思った。

わたしが学生の頃は、「流行」とか「ファッション」を求めて旅行しようと思うと、パリ、ロンドン、ロサンゼルス、ニューヨークあたりで、お金もかかるし思い切らな行かれへんかった(ていうかやっと去年初めてニューヨーク行っただけやし)。でも、今の韓国、中国、台湾はじめ東南アジア諸国の若い子やったら、とりあえず東京行くってことができてええなあ、と思った。東京ぐらいやったら週末とかでも気軽に行けるやん。不景気とか勢いなくなってるとか言われても、やっぱりそれなりに世界中のもの売ってるしなー。
気軽に遊びに来てくれてるアジア系の若い子と、気軽に交流ができたら、それは日本の人にとっても楽しいことやと思う。

3月☆日
基本、雑誌は好き。病院の待合いとか雑誌が置いてあるところやと自分では買わないのを見る。一つの世界というか、この人たちはこういうコミュニティーの中で生きてるんやなあ、ってのぞき見られるし。 『和樂』を買ってみた。50代ぐらいの、お金と暇があって美術館とか着物で歌舞伎行ったりとかしているおばさま向けっぽく、へー、こんなニッチなジャンルもお金持ってる層やから成り立つのね。図版は充実してるし、解説も親切やし、付録はなんと伊藤若冲のクリアファイル。若冲ぬり絵のページもあったりして、へー、へーと感心しながら読みました。

3月☆日
さらに雑誌を物色してると、「人間関係のスキル」的な特集って結構ある。「初対面の人も、二人きりでも大丈夫」て見出しを見て、それはそんな難しくないんちゃうかなと思った。誰でも当てはまるわけではないねんけど、人間関係の難しさって、知らない人じゃなくて圧倒的に知ってる人との関係やと思うねんな。初対面の人と「じゃ、また、なにかで」みたいな適当なことって言えるけど、そのあとが問題やんな。
会社いっしょやけど、仕事でよく会うけど、そんなに親しくない人とどう接するかとか、しばらく会ってない人にどうやって連絡取るか、とかのほうが難しい気がする。なんていうか、「距離感」ていうやつやな。

人付き合いが苦手で、っていうと、「人見知り」シャイみたいなイメージで語られてることが多いけど、普通にしゃべれてるように見えるけど内心は困ってたり疲れてたりするっていうほうがリアルなんちゃうかな。
前に読んだ人間関係の記事で感心したのは 「好き or 好きじゃない」と「対処しやすい or 対処しにくい」の組み合わせで4種類に分類してて、「こちらは苦手でも、対処しやすい人」はストレスが少ない、「逆にこっちは好きでも、対処しにくいor向こうにちょっと引かれてるみたいな場合」は非常にストレスになるので距離を置いたほうがいい、って書いてあったこと。なるほどなあ。去るものを追うのは余計状況悪化するっていうのは、今までの人生を振り返っても納得。切ないけど、そうなんよね。

3月☆日
東日本大震災から2年。
1年目は、すごく長く感じてたなと思う。去年の3月11日はテレビとか追悼行事とかの反応がある程度予想できたけど、2年目にどういう番組があるかは予想しにくかったというか、この1年で関心の有りようがだいぶ変わったんかな、とテレビの特集の取り上げ方を見ていても意外に思った。もしかしたら、問題が複雑・深刻になりすぎて、テレビは取り上げることも難しいというか、どういう切り口にしていいかわからなくなってるのかもしれへんとも思った。あれだけの大災害やから1、2年で解決するはずなくてこれから長い時間をかけて取り組んでいかなあかんのやけど、実際の現地での状況やとらえ方と、普段生活してる東京の風景とがどんどん離れてしまってるな、と自分自身も含めて、思う。そもそも、節目の日にだけ取り上げるっていう問題でもないし。
去年、石巻に行ってまた行きたいって書いたけど、1年行けへんかった。牡蠣小屋がオープンしてるから食べに行きたいな。

3月☆日
スーパーに行くと苺の新種が並んでる。「スカイベリー」「いばらキッス」などどれも正直びみょーなネーミング。「とちのか」の独占権が切れるそうで、新種開発ラッシュやってニュース番組でやってた。その中で、長野の高地での苺作りにチャレンジする農家の組合を取り上げててんけど、おっちゃんたちが考えた名前が「カッパの初恋」。いや、カッパ伝説があることも、おっちゃんらが一生懸命話し合ってる姿も、苺のヘタとカッパの皿をかけてるのも、素敵やと思う! わたしは好き! でも、苺やし…。やっぱり若い人を話し合いに一人くらい入れたほうがいいと思いました。

 

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柴崎友香(しばさき・ともか) 1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com/

権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:https://naohirogonda.tumblr.com/
風呂ンティア:https://frontier-spiritus.blogspot.jp/

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権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
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