第53回 昭和映画な日々です。
6月☆日
コンサバ系ファッション誌が意外に合ってたかもという話を書きましたが、やっぱりモード系もカルチャー系もおもしろいので、結局部屋の中に雑誌が増えすぎて大変なことになっております。で、これはどの雑誌見ててもたいてい思うことやねんけど、ここに載ってる服とか鞄とか靴とか化粧品とかそれなりに揃えたらすごい額になりますよね? みなさん、重点を絞るとか似て非なるものを探すとか工夫してはると思うんですけど、同じ雑誌に載ってる家計診断っぽいページに「化粧品 3,000円」(1カ月)などと書いてるのを見ると、どないせえっちゅうねんと思うよね。ほんで、たくさん載ってる洋服の写真見て最近つくづく思うのは、20代前半しか着られへんようなデザインやけどええ値段する服って、いつ買うの? ということ。特に自分が20代に全然お金なかったせいもあるねんけど、今やったらあの服買えるのにな、でももう着られへんし……とすごいほしかったけどあきらめた服を思い出す今日この頃。
ところで、今、もしも18、19ぐらいになったとして、やってみたい格好はゴスロリなんです。あれ、勇気いるし(男にも女にも大人にも全方位にウケの悪い、『下妻物語』じゃないけど一種の鎧的な服やと思う)、お金もすごいかかるから、1回やってみたいなあと思いながらついぞ着ることがなかったのですが、今この歳になったらなにをどう考えても着られないじゃないですか。あれこそ、あの歳でだけできたことやなあ、1回やっとけばよかったなあ、とときどき思う。
ついでに、10年以上前やけど男前の結構好きやった俳優がインタビューで好きなタイプを聞かれて、「ロリータ以外。あれだけは勘弁して(笑)」とかなり馬鹿にした感じで答えてて失望したことがあります。
6月☆日
昭和映画な日々です(以下、どれも日本映画専門チャンネルで見ました)。
『女は二度生まれる』(1961年)、川島雄三監督、若尾文子主演。九段の枕営業専門な芸者が男を渡り歩きつつ、バー勤め、愛人生活、囲ってくれてたお父さんが死んで再び芸者に戻って……というミもフタもないあらすじやけど、『幕末太陽傳』の川島監督で、若尾文子が演じるとなんとも不思議な映画になる。イノセンスとなまめかしさが同居してて、かわいらしいけど、どこか感情がずれてるような怖さもあり、こういう女優さんってほんま希少。今年80歳におなりのはずなのですが、当時26歳ぐらいのお姿と白戸家のCMと、ほとんど変わらん。どうなってるのや。
現代やったらこういう役って誰ができるやろ、うーん、なかなかおれへんなー、と考えてて、あ! 深田恭子や!! それしかない! あのかわいい顔で、ちょっと小首を傾げながら、男を踏みつけてざくざく歩いていきそうな感じ。深田恭子にはもっとファム・ファタルな役、近づいてきた男が10人ぐらい変死する(でも深キョンはにこにこしている)役をやってほしいと前々から思っててんけど、若尾文子のリメイクを是非!!
あと、上戸彩にももっとエロで怖い役を!! シャーリーズ・セロンがアカデミー主演女優賞を獲った『モンスター』のクリスティーナ・リッチがもうほんまに悪い&怖い女なんやけど、上戸彩ならあれができる! CMで元気いっぱいみたいなんばっかりやってるのはもったいなすぎる。(※7月から始まったドラマ『半沢直樹』の妻役は色気があっていいね!)
6月☆日
昭和映画さらに。『燃えつきた地図』(1968年)、原作・安部公房、監督・勅使河原宏、音楽・武満徹、主演・勝新太郎 という、濃すぎるというか、もう何があっても受け止めます、な組み合わせ。探偵(勝新)が失踪した男の行方を探すうち、不条理な状況にどんどんはまっていくという、スリップストリームな作品(ポール・オースターのニューヨーク三部作もこの系譜やね)。
失踪した男の妻は市原悦子。若いときはこんな感じやったのかー……ということはなく、声も顔も完全に市原悦子(当時31歳)。団地の1室でビールばっかり飲む人妻・悦子、確かにおかしな世界に巻き込まれた感ありまくりです。喫茶店のエキセントリックなウェイトレスは吉田日出子、怪しい情報ばかり持ってきて混乱させる男は渥美清、と、風景は東京なんやけど、パラレルワールド的な別の東京をさまよう感じやった。勝新と悦子のベッドシーンまであり、昭和半ばのエネルギーに完全に参りました。
6月☆日
昭和映画続き。『君よ憤怒の川を渉れ』(1976年)、高倉健主演。検事(高倉健)が罠にはめられて逮捕されて逃亡、殺人の濡れ衣まで着せられながら汚名を晴らすため真犯人を追う、と、ま、『逃亡者』系やね。あんまり意味なさそうなのに雄大な北海道ロケ、大物俳優満載の、オールスターキャストでとにかく派手な大作映画。
途中、北海道の山中を逃げる高倉健が悲鳴に気づくと、中野良子が木に登って絶叫している! 根元ではぬいぐるみ感溢れる熊がゴジラっぽくがおー、がおー! なんじゃこりゃ、とここで一気に引き込まれてしまいました。その後も、助けた良子の豪邸に行くと、県知事を目指す父親は大滝秀治。秀治が警察に通報して、逃げ出した健を、馬に乗って颯爽と現れた良子が助ける。「なぜ、おれみたいな男を助けるんだ」「あなたが好きだから!」 えー、さっき熊撃ち殺してもらっただけですやん。その後、刑事・原田芳雄につかまるも、熊に襲われ(またかい!)、瀕死の芳雄と取り引きして逃げ、セスナ機を自ら操縦して(秀治に5分で教えてもらってマスター)で東京へ。立川で見知らぬ女・倍賞美津子(下着姿になるためだけに出てきたとしか思えない)に助けられ、新宿で警察に見つかったら、いきなり馬の群があらわれ新宿大混乱、もちろんその馬に乗った良子に助けられる。健を陥れる証言をした田中邦衛は怪しげな薬を打たれて精神病院で廃人状態……。いやー、昔の映画ってかなりの無茶してもOKやからすがすがしいね。
それにしても、芳雄の上司役の池部良がものすごい男前でびっくり。おじいちゃんになった姿しか知らんかったなあ。超ダンディで、そこだけ空気が違う。こんな美男タイプの俳優さん日本にいてたんや。池部良、戦争に行って南方で抑留されてた経験もあり、実はとってもおもしろいエッセイを書く人でもあるんよね。。
で、この映画、無駄に長くて2時間半近くあり、近頃録画しすぎてHDD容量が不足してたので、最後の30分が切れてた。ストーリー的にはだいたい予想つくし別にええねんけど、ラストに向けてまだまだトンデモ場面がありそうやから、それだけ確認したいなー。
6月☆日
昭和の東京の景色を見たくて、いろいろ映画を見てるのやけど、60年代はまだまだ建物がすかすかで、高い建物も少ないし、高速道路もあんまりなくて、今の東京とだいぶ違う。それに、緑が今よりも全然少ない。最初は意外に思ったけど都心は戦争で焼けた跡やし、郊外は造成したばっかりで、ひょろひょろの木がちょっと植えてあるだけ(ウルトラマンシリーズを見てもこの感じはよくわかる)。
それが70年代後半やとビルも増えて、ちょっと懐かしい程度の風景に。70年代初頭に高層ビルがどんどん建った新宿は今とそんなに変わらないように見える。ただ、今と比べると、街が暗い。撮影の仕方のせいもあると思うけど、やっぱり今の深夜でも煌々と照ってるあの大量ライトはちょっと異常なんかもなー。
最初、東京の昭和の風景を見るのに写真を探しててんけど、なぜか「昭和」と名の付く写真集はモノクロ写真ばっかり。後半はカラー写真もたくさんあったはずやのに。写真家がモノクロ好みやったり、「昭和」な写真を求める人はモノクロがいいのかもしれないけど、やっぱりどうしてもモノクロやとカラーより古い時代に見える。それで、映画に映ってる風景を探してるというわけですね。 しばらく昭和映画鑑賞続きそう。
昭和30~40年代の映画とかサスペンス、刑事ドラマなんかで、金持ちのおっさんというとガウン着てブランデー飲んでるみたいな場面があるねんけど(上記では大滝秀治)、今そんなに飲めへんよねえ、ブランデー。昔は応接間の飾り棚に必ずブランデーの瓶がある的なイメージやったけど、今はどっちかというとパウンドケーキを連想してしまう。
ウイスキーがハイボールブームで復活したみたいに、ブランデーも復活する日が来るのやろうか。
プロフィール
柴崎友香(しばさき・ともか)
1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com/
権田直博(ごんだ・なおひろ)
1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:https://naohirogonda.tumblr.com/
風呂ンティア:https://frontier-spiritus.blogspot.jp/
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