よう知らんけど日記

第54回 トランポリン買ってみた。

2013.8.6 18:01

7月☆日
ひさびさに上野の[古城]へ。
昭和な喫茶店もいろいろあれど、ここの内装のゴージャス&ようわからん度はかなりぶっちぎり。ロシアから運んできた岩がごろごろしてる壁、ヨーロッパの騎士が描かれたステンドグラス、ツタンカーメン、金のライオン、白いレースのカバーがかかったソファ、当然シャンデリアきらきら。いいね、こういうお店、ほんま好きやわー。そして店員さんのおばちゃんたちがまたええ感じ。

昭和喫茶、大好きなんやけど、このご時世ではなかなか難しいのか、わたしが東京に来てからでも、めっちゃ行ってた渋谷の[アンカレッジ]と六本木の[貴奈]がなくなって泣いております。現役でおすすめは、[古城]と新宿[西武]、池袋[伯爵]、浅草[アンヂェラス][デンキヤホール](ここのゆであずきは最高)。あと神保町は[さぼうる][ミロンガ・ヌオーバ][伯刺西爾(ブラジル)]といろいろあって、銀座もまだあるし、やっぱり東京東側のほうが豊作かな。
純喫茶は関西の方がまだまだ現役な気がします。

7月☆日
「夏目漱石の美術世界展」(東京藝術大学大学美術館)。夏目漱石の小説は、わたしのいちばん好きな『草枕』もミレーの「オフェーリア」がモチーフやったり、美術作品のことがよくでてくるねんけど、その作品や、漱石本の装丁、自作の絵、同時代の画家などを集めた展覧会。いやー、ずっと気になってた作品がまとめて見られて感動。それに、その作品を描写してる箇所が並べて展示してあって、漱石がどういうふうに書いたか大変勉強になりました。じっくり見すぎて時間がなかった。漱石はイギリスに留学してた時期がちょうどラファエル前派全盛の頃で、影響を受けた絵が繊細で色っぽいきれいな女の人の絵が多くて、見ててもうっとり。今回は「オフェーリア」はなかったけど、来年「ラファエル前派展」で来るそうです。15年ぐらい前に「テート・ギャラリー展」で見てんけど、再会がたのしみー。
美術館を出ると、雨上がりで曇ってるけど涼しくて、ちょうどええなあ~と思いながら、上野公園と根津の路地を散歩。こんないい気候が続いたらええのになー、と思ったら、一瞬でございました……。

7月☆日
東京国際ブックフェアの一環で、平野啓一郎さんと田中慎弥さんとのトークイベント。なんとお客さんは1,500人! 普段のイベントでは50人ぐらい、学校の講演で700人が最高記録やったのに桁違い。会場の広さとずらっと並ぶお客さんにひっくり返りそうになりましたが、平野さんも田中さんも同世代で話しやすく、子供のころの読書エピソードもおもしろいことがいろいろ出てきて、楽しい時間になりました。質問コーナーも熱心な人が多くて、いいイベントに呼んでもらえたなあと思いました。ブックフェアはなんと出展してる出版社の本が2割引で買えるという、夢のような催しでした。来年は、キャリーカート持参で買いにきます!
会場の東京ビッグサイトは、会社員時代に毎年展示会の仕事で行ってたので懐かしい。着いてから案内板眺めてたら、飲食店のところに「マーメイド」と名前を見つけた。あーっ、マーメイド! 行ってたなあ、マーメイド。カフェテリア方式の食堂。ここがいちばんマシなもの食べられた。売店の天丼買ったら真っ黒でびっくりやったり、仕事もとにかく過酷やった。トイレでコンパニオン服に着替えたなーとか、4日間ほぼ揚げ物しか食べてなくて最終日にお台場の[シズラー]のサラダバーでひたすら野菜食べたなーとか、記憶が甦ってきました。

 

7月☆日
暑い。いきなり暑い。なんですかこれは。
暖房も冷房もぜんぜん使わんでいい期間がちょっとしかない気がする。5月、6月とやっと電気代が減ってきたと思ったのに……。

7月☆日
トランポリン買ったんですよ、ちょっと前に。あまりの運動不足に試行錯誤中なんですが、直径1メートルもない小型のトランポリンがありまして。今から運動、と構えんでも、ついでな感じでぼよんぼよんできるのはええね。しっかり運動とまではいかないのですが、体ほぐれるぐらいはできていいかもしれません。

7月☆日
世の人の関心があることは今ってたぶん、圧倒的に食べ物なんちゃうかなーと思う。そして、ただ食べるっていうのじゃなくて、いろんな価値がくっついてくる。物語消費いうやつやね。何年かけて、○○さんが作った、どこどこ産の、1年にちょびっとしか採れない希少な、厳選したわずかな、と届けられるまでの付加価値がまずある。それから、食べるときも、糖質が少ない、アルカリ性食品、陰やとか陽やとか、デトックスとか。さらには大地の気を取り込むなんていうのまで。
コンビニでも、地域限定、有名店コラボ、30品目のなんとか、といろんな題目ついてる。
何にも考えんとただ食べたいものを食べるっていうことが、逆に難しいかもしれへん。

7月☆日
スーパーの中で地方の特産品を売ってる出店、あれが東京やとやっぱり東日本が多い。宇都宮餃子率もかなり高いのやけど、東北のもので関西ではあんまり見たことないものを売ってることがある。ちょっと前に「がごめ」って書いてあって、なんなんやろ? と気になって検索したら昆布やった。今日看板が出てたのは「ぎばさ」。ぎばさ? これも昆布でした。北のほうは昆布をよう食べはるのやな。松前漬けというのも、こっち来て初めて食べた。

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柴崎友香(しばさき・ともか) 1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com/

権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:https://naohirogonda.tumblr.com/
風呂ンティア:https://frontier-spiritus.blogspot.jp/

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権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
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