よう知らんけど日記

第57回 カップ麺より袋麺。

2013.10.9 18:04

8月☆日
東京に来てから7回目の夏なんですが、明らかに暑くなってる。暑い時期が長くなってる。来たばっかりのころは、お盆すぎたら楽やなあと思ってたのに……。
とはいえ、職業柄、出かけなくてもいいので、昼間外に出ない。出る気がなくなってしまう。どうしてもいかなあかん用事以外、外に出るのは日が沈んでから。携帯電話の万歩計がずっと記録のこるんやけど、8月やばいです。24歩とかの日がごろごろある。当然、体重っていうか、内蔵脂肪が……。
そういや高校までも夏はとにかく家に閉じこもってたなあ。暑いってなんもできへんよね!

8月☆日
ちょっと前に録画してた「世界ねこ歩き スペシャル」(BSプレミアム)。岩合さんとアルフィーの坂崎幸之助さんの対談がおもしろかった。坂崎さんも保護猫がたくさん家にいるそうで。岩合さんが、よくインタビューなんかで猫からどんなことを教わりますか?って聞かれるけど、猫に教わることなんてなんにもないですよ、猫と人間は違う、違うっていうことを知ることなんだ、って言うてはったのが心に残った。そうそう、つい、人間は何でも人間に引き寄せて考えるけど、猫は猫の生を生きてるだけなんよね。「ねこ歩き」、猛烈好きな番組やけど、ただ猫が動いているっていうことがひたすらおもしろいし、感動的。

 

9月☆日
袋麺が好き。
地味な存在やけど、カップ麺より袋麺。味もカップ系より好きなんが多いし、家で卵とかキャベツとか入れるんが好き。
昨今、生麺を超えた! 的な商品が流行ってますが、わたしがおいしいと思うのは、なんていうても「ラ王」。「冷し中華」食べたら麺がおいしすぎて、なんもなしで麺だけ食べてもええぐらいやった。大阪出身のせいで、全般に舌が日清食品仕様にできてるのかもしれませんが、やっぱり日清食品においしいのが多いなあ。インスタントラーメンはじめて作った会社やし。それなのに、東京のスーパーでは全体に日清食品製品が少なめ。明星とかマルちゃんとかが幅を利かせている。
あと好きなんは、エースコックのワンタン麺ね(ここも大阪の会社)。「ワンタンに肉は入っていません」、がいいね!

9月☆日
夜歩くと、虫が鳴いてる。なんの虫か姿は見えへんけど、ようさん鳴いてる。昼間は暑くても、夏は終わり。

9月☆日
『サラメシ』(NHK総合)。働く人のお昼ご飯を紹介する番組。お弁当見せてもらったり、お昼食べに行くのについて行ったり、今は亡き著名人が通ってたお店を紹介したり(NHKなのでお店の名前は言うてくれない。番組見ながらソッコー、場所とジャンルでネット検索して、食べログでブックマークしてる。岸田今日子が通ってた中華屋さんめっちゃ行きたい)。
この日はスカイツリーも担当した超絶技巧クレーンオペレーターの人に密着。200メートルの高層ビルのてっぺんが今の職場。ぽつんと一人でガラス張りの運転席に一日中座ってはるのやけど、超絶景っていうか、わたしはもう絶対無理……。クレーンにたどり着くまでにはしご30メートル上るって、それビルの10階ですやん。高さ的にも体力的にもそれだけでもう驚愕。1回上ると仕事終わるまで下りられないので、お昼も一人でクレーンの運転席で食べてはるんやけど、そのお弁当が! 直径30センチぐらいの平べったい特大おにぎり!! 全体に海苔が巻いてあって、中にはエビ天、豚の味噌煮、野沢菜などいろんなおかずがぎっしり。すげえー。20年以上、奥さんに作ってもらうこの特大おかずお楽しみおにぎりがお昼ごはんやねんて。ほかにも、何百人が働く現場、ビルの17階と30階とかが臨時の食堂になってて、500円均一のお弁当が山積み。そしてさっと食べて残りの昼休みは寝る! 潔くてなんかええ光景やった。

後半は、富士山に観光で登る馬を管理してる組合のお弁当。おかみさんが5時に起きて組合員8人分のお弁当を作る。家庭菜園でなすびもいでくるとこから20分もかからんと8人分できて、感嘆。重労働やから塩辛い目に作ってると話すおかみさんを見ながら、いろんな職場、いろんなお昼の光景があるんやなあ、と。
前に、ゲームデザイナーの人が完全見た目優先デザイン弁当(サンマの頭だけをいっぱい並べたり漬け物3,000円分使って花模様にしたり)がおもしろかったので、本にしてほしいなあ。

9月☆日
『サラメシ』、ご飯ももちろんおもしろいけど、職場や仕事の様子がかいま見れるのがいい。大人も自分が経験した職場以外のことってぜんぜんわかれへんし、ましてや中学生とか高校生って、職業の具体的イメージって持ちにくいと思うねんな。ざっくりサラリーマン、公務員、IT系、クリエイター系みたいな、メディア上で目に付くものしか思いつかへんかったり、その内容も紋切り型やろうし。現代は、親の仕事してるとこも見られへんことが多いしね。でも、たとえば、自分が今、手にしたペットボトルのお茶だって、企画する人、デザインする人、広告考える人、品質検査する人、茶葉の生産する人、トラックで運ぶ人、段ボール箱作る人、コンビニのレジの人、コンビニのシステム作ってる人、各過程で電気設備、道路設備、それに付帯するものを作ったり保守点検したりする人、とそりゃもう無限に「職業」が関わってくるわけで。そういう職業の人が具体的にどんな仕事して生活して、っていうのが「サラメシ」から自然にぐっと伝わってくる。中高生向けに仕事を紹介してた『平成若者仕事図鑑』(Eテレ)もよかったけど、ちょっとかっちり枠のある「仕事」って感じがあったし、『仕事ハッケン伝』(NHK総合)はやっぱり仕事のクライマックスだけを映してると思うので、『サラメシ』ぐらいの、仕事そのものを紹介するより、お昼休みのひとときから伝わってくる仕事のリアルなところがおもしろい。

 

 

  • LINE

柴崎友香(しばさき・ともか) 1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com/

権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:https://naohirogonda.tumblr.com/
風呂ンティア:https://frontier-spiritus.blogspot.jp/

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

柴崎友香(しばさき・ともか) 1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com/

権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:https://naohirogonda.tumblr.com/
風呂ンティア:https://frontier-spiritus.blogspot.jp/

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本