よう知らんけど日記

第61回 やばい、とはまさにこの味。

2014.1.7 18:08

11月☆日
ROVO+SYESTEM7のライブ@新木場STUDIO CORST。すごかった。この1年ぐらいでROVOのライブは何回も行ってるんやけど、生きてるなあ、生きててよかったなあ、って全身で奥底から感じるのはROVOのライブのあいだだけかもしれへん。というくらい、毎回毎回たいへんなところまでつれていってもらえる。ライブが終わったとき、近くにいた男子が「こんなとこまで行くんや!って思ってからそっからまだ3回ぐらい行くもんな」って言うてて、その通りや! と話しかけそうになりました。
今回は、SYSTEM7もいっしょやったから、いつもとは違うリズムが生まれて、どうなるんやろどこいくんやろ、ってお客さんも探りながら、それがだんだん渦ができるみたいに一体化して昇っていくのが楽しかった。それにしても山本精一さんのギターがすごい。ギターソロになると、あきらかに自分の中のなにかがはじけ飛ぶのがはっきりわかる。周りの人も、はじけ飛んだ瞬間がわかる。自分の皮がなくなって、音も空気もいっしょになる。
しかし新木場遠い。周りに何もない、っていうてもふつうちょっとぐらいなんかあるけどほんまに何もない(お店とかね。会社と倉庫はある)。なんであんなとこにあるんやろ。

11月☆日
最近、会う編集者の女の人がかなりの確率でCELINEの同じバッグを持っている。薄い革のざっくり大きいトート。今、知ってるだけでも7人。ゲラ(印刷前の活字にした原稿)ようさん入れてもだいじょうぶやもんな、あれ。ふつう、女性誌に「お仕事用バッグ」として載ってるのって「A4入ります」やけど、ゲラはB4とかA3のこともあるもんね。編集者バッグもしくはゲラバッグと呼びたい。それぞれ色違いなので、並べて一覧を作ってみたい。

11月☆日
仕事があって大阪へ。日曜の夜、「ほんわかテレビ」でも見よかと思ってテレビつけたら「なるみ・岡村の過ぎるTV」てやってる。えー、大阪ってこんな番組やってんの!? めっちゃええやん、うらやましい……。わたしが東京に引っ越した直後、なぜか3ヶ月だけ「なるトモ!」放送されててんけど、関東の人になるみって言うても通じへんよなー。なんていうたらええんやろ、あのキャラ。かわいらしいおばちゃんぽいおねえちゃんというか、得難いね、あの感じ。ほんで岡村隆史が、ごくごくふつう。リラックスして楽しんでる。東京のテレビに出てる大阪の芸人さんは、頑張りすぎというか、やっぱり無理してどや! どや! になってんのよね。だから、ほかの地方の人が想像する大阪ローカルテレビって芸人が押しまくりでうるさそうかもしれへんけど、ほんまはどっちかっていうと、のんびりおっとりした感じやねんな。そのあたりをもっと伝えたい。「ほんわかテレビ」も堪能。東京来てからNHKばっかり見てるなーと思っててんけど、大阪の番組やってないからや、とつくづく思いました。

12月☆日
またもとんぼ返りで新大阪で食べ物物色。りくろーチーズケーキはこないだ買うたしなー、と決めあぐねて、新幹線のホームの売店でなんとなく「自由軒カレー煎餅」というのを購入。これが! めっちゃおいしい! カレーにウスターソースが加わったしっとり系。やばい、とはまさにこの味。もっとようさん買うてきたらよかったー。と思ったら、ネット通販があるやん。こうてまうなー、これは。大量に食べてまうなー。

12月☆日
相変わらずCSで昔の映画やドラマを見ておりますが、女優のメイクや髪型、建物なんかが古いのは一目瞭然として、いきなり過去に引き戻されてしまうのは音楽! 古い! 効果音やBGMでものすごく時代を感じる。70年代のみゅーみゅんみゅんみゅーん、ていう、「太陽にほえろ!」でよく流れてた感じのあれ。なんの音なんやろ、あれ(音楽系まったくくわしくなくてごめんなさい)。そのもうちょっと前やとフリージャズな感じ。80年代やったら象徴するのはなんといっても「スクール・ウォーズ」のオープニングで流れる、トゥクトゥウン~って電子ドラムね。
音って、聞こうとしてなくても耳はふさぐことできへんから、無意識に刷り込まれててその時代の空気と結びついてるんやろなあ。

12月☆日
ファッション誌によくある着回しコーディネートのカレンダーみたいなページ。
雑誌ごとに想定してる読者というか読者の願望の職業や生活が投影されてて読むとおもしろいねんけど、コンサバでもモテ女子系でもようあるのが「今日はだいじなプレゼン。気合いを入れて新しいジャケットで」ていう設定。プレゼンて、世の人、そないにしはるの? どっちかっていうとあんまりプレゼンせえへんと思うねんけどなー。する人はするんかな。

コンサバ系は「クラス感」出さなあかんから「赴任中の帰国組も集まる大同期会」「知人のフォトグラファーの出版祝賀パーティー」「格式高い和食店で新クライアントと懇親会」とさりげない? 上層アピール半端ねえ! 「一ツ星シェフのイタリアンレストランで女子会」のあえて「一ツ星」もリアルなアピール感すごいね。行き慣れへんとつい「三ツ星」って書きたくなるところやね。

12月☆日
ふと通りかかった交番の指名手配のポスターに目がとまる。なにをやらかした人なんかはちゃんと見いひんかってんけど、男の顔写真の横に「内股歩き 競馬好き」って大きく書いてある。えー、そんなこと書かれるん、めっちゃいややん! けっこう最悪やん! こんなん全国にさらされるぐらいやったら捕まったほうがまし、って思わせる作戦やろうか。想像しただけでつらいわー。たとえば自分の顔写真に「足の爪が上向いてる テレビ好き」とか書かれてたら……。

12月☆日
やってきました、イエナリエの季節。イエナリエってあれですよ、家のイルミネーション。何年か前に関西ではあれイエナリエって言うって教えてもらってんけど、ローカルのテレビ番組とかで言うてるんかな。やりすぎてデイヴィッド・リンチの映画みたいな悪夢っぽい光景になってるとこも多数ございます。昼間に近所を歩いてたら、2階のベランダにべろーんとイカの干物みたいにぺっちゃんこのサンタがぶら下がってるとこがあって、なんやあれ、怖っ。と思ってて、しばらくして夜に通ったら、かなりの電飾満載に屋根が光ってて干物サンタもふくらんでベランダから身を乗り出す形になってました。いや、怖いことに変わりはないけど。ていうか、1階にももう一人、空気で動いて出たり入ったりしてるサンタがおって、より一層怖くなってたけど。

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柴崎友香(しばさき・ともか) 1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com/

権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:https://naohirogonda.tumblr.com/
風呂ンティア:https://frontier-spiritus.blogspot.jp/

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権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
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