よう知らんけど日記

第67回 意味不明名称の王道といえば…。

2014.5.10 18:13

3月☆日
桜の季節がくる度に「こんなに早いわけがない、テレビうそついてる」と思うのですが、それが年々悪化してる。この1カ月ほとんど家から出ずに原稿書いてるため、桜ちらほらで焦るどころではなく、いきなりめっちゃ咲いてる。今年は2月が大雪続きで「まだまだ冬」感強かったし、梅も桜も駆け足で開花したみたいやね。咲いてますねえ、桜。でも見に行けませんねえ……。

3月☆日
桜をはじめとして梅やったり菜の花やったり話題になったり見に行ったりするのは花やけど、葉っぱ、新芽が出るのもそれに劣らずわくわくする。はっと気づくと、黄緑色の葉っぱが出てる。昨日なかったのに、今日ある。しかもいっせいにあっちもこっちも、黄緑出現。何にもないように見える細い枝のどこにこんなもんを隠してたかのと、不思議でしょうがない。出てきたばっかりのちっちゃい葉っぱが、ちゃんとそれぞれの形をしてるのも好き。ちっちゃいモミジ、イチョウ、ツタ、たいへんかわいい。新芽が出てると思ったらすぐにふさふさになってるし、ごはん食べへんのにあんなに成長する植物はすごい。

3月☆日
『笑っていいとも!』最終回。が、日を勘違いしてたうえ、ネットのニュースでやたらと大物ゲスト誰が出るみたいな話題が出回ってたため、もう終わったのかと思って見逃した。わたしがいちばん見てたのは中学生のときかなあ。当時はとにかく明石家さんまが好きだったので、金曜日が楽しみやった。あのコーナー、ただ雑談してただけなんよね。10年以上、雑談。31日夜の「豪華すぎる公開打ち上げ」みたいな特番は、全然普段の『いいとも』感がなくて、特に後半の泣きスピーチ部分はなんていうか、シュールでした……。

いろんな番組が最終回やったり出演者交代やったわけですが、たまたま見たのが『ワールドビジネスサテライト』の小谷真生子担当最後の回。クールに終わるかと思ったら、出演者みんなボロ泣きで、不意を打たれました。長くやってて、家族的な雰囲気になってたんかな。
このところ長寿番組の終了が相次いでたり噂になってるのもまだあったり。「『いいとも』は31年(ちなみにその前の『笑ってる場合ですよ!』の記憶があります)、『WBS』の小谷真生子が16年、『はなまるマーケット』が17年続いたらしいんやけど、その長さを思うにつけ、90年代後半からテレビを中心としていろんなものが停滞してたんやなあと。その前はそんなにようさん長寿番組なかったと思うねんな。長くやってたと思いこんでる定番の番組も延々再放送してたりして。そもそもテレビの歴史自体が浅かったから、変化が大きかったのもあると思う。ジャニーズもその前までは3年ぐらいで一番人気のグループが入れ替わってたけど、SMAPから順列固定状態。
で、今は間違いなく転換期ではあると思うけど、急に新しくておもしろい番組がどんどん出てきてるということはなくて、リタイア世代向けの昭和は良かったスペシャルドラマようさんやってたりするわけで、今ががんばりどころというか、ここでちゃんと新しい才能がおもしろいことできるように抜擢したり自由にしたりしないと、テレビの将来が大きく変わってくるよ、とテレビ好きとしては応援と叱咤激励な気持ち。 そしてたぶん、日本中あちこちテレビ以外でも似たような状況なんちゃうかな。ニュースで映る会議っぽいものの出席者、高齢者ばっかりやし。どんだけすごい人が活躍してようが、ちゃんと次の世代に場所を作っていかないとそのジャンルは下り坂やと思う。

3月☆日
消費税駆け込み。
地震やら大雪やら、買いだめ場面に何回か遭遇しましたが、街に出るとそれをそないに買うてどないしますねんていう棚の空き具合に毎度感心。どんな場合もパンはすぐなくなるね。
情報番組で取材されてた人が、調味料やら日用品を1年分ぐらい買いだめしてんのやけど「3%って金額少ないからたくさん買わないとお得感がない」って言うてて、いやそれを「本末転倒」というのですよとつっこんだ人はようさんおるやろな。買いだめしたあれやこれや、絶対あとで特売になるし、置いといて無駄にすると思うよ。それに、現代人にとっては「消費」自体が目的化してるというか買い物権の行使こそ快感みたいなものがあるから、反動で買えないストレスがあると思うねんな。たとえば洗剤とかシャンプーとか新製品出ても、1年間選ぶ自由がないわけやん。
ポイントためるとかクーポン券使うためにいらんもん買うのと似てますな。わたしもやってまうけど。

ニュース番組では定期券を買う行列を取材。なんと最長5時間(ほんまかいな)。節約できるのは多くても千円、二千円。それって、たとえば何回か特売狙うとか外食やめるとか工夫すれば取り戻せる額なわけで、その5時間を別のことに使ったほうが有意義というか、時給800円でバイトしたら4,000円分の時間なわけで、なにか別のことができそうな…。と、並ぶのがなにより嫌いなわたしは思う。のっぴきならない事情の人もちゃんと賢く節約してる人もようさんいはる思うけど、「買いだめ」「かけこみ」せなあかん気分に押されて買うてもた! な人も多いやろなー。

3月☆日
火野正平『こころ旅』、2014年春の旅始まりました。今回は愛知県から北上して日本海側を北海道まで。お休みの数週間、さびしかったー。こんなに放送を心待ちにしてる番組、そうそうないね。これからは、お休みの週は過去の傑作選をやってくれるそうやし、朝版も夜版もオンデマンドに入れてくれるそうで、毎日正平ざんまいですよ!!
いやー、しかし、ここに来て正平のモテが大爆発やね。今までもさんざん「モテ期」があったやろうに、60歳過ぎてから全国津々浦々の老若男女にモテるとは、本人も予想せえへんかったやろうな~。

4月☆日
大金持ちになりたい、と普段そんなに思わないのですが(多少あれもこれも買えたらなーとは思うけど、お金ってあったらあっただけなくなるし、何億とか持っててもたいへんそやなと)、長距離移動のときだけは、めっちゃ思う。心底、お金を使いたいと思う。初めて新幹線のグリーン車乗ったとき(講演の仕事でチケットついてた)、あまりの快適さに驚いた。なにこれ? 魔法? なレベル。椅子広いし、足置きあるし、おしぼり出してくれるし。体が楽やから、とにかくあっという間。2時間半を全然長く感じない。東京ー新大阪間やと約14,000円が18,000円なんで、思い切らなあかん絶妙な値段設定してくるよね。

飛行機も、座席の都合でエコノミーのちょっとええ席になったことがあって、それだけで全然疲れ方が違った。ビジネスとかファーストとかどないなってんのやろ。エコノミーでもいちばん前の、客室乗務員さんの向かいになる席でも、めちゃめちゃ楽やった。足伸ばせるし、トイレに立つのもなんも気にせんでええし。
ビジネス&ファーストはあまりにも難関過ぎるんで、もうちょっと間ぐらいの席ができてくれへんもんやろか、とつくづく思う。

4月☆日
商業施設、複合ビルがあちこちオープンしてますね。一時この手の施設の名称が、オアゾ、トキア、ルクアなど、意味も分からんし何語でもない、世界のどこに行っても通じない言葉が続いていたのですが、それがここに来て、渋谷ヒカリエ、あべのハルカス、吉祥寺キラリナと微妙にもっさりした日本語もじりへとシフト。でもやっぱりカタカナなんやな。丸の内のKITTE(元中央郵便局)とか「切手館」でええやん、とか思う。漢字で思い当たるのは京都の「新風館」ぐらいやけど、あれは京都ブランドであえて和風で成り立ってるんやろな。
意味不明名称の王道といえばマンションの名前ですが、今ちょこっと「高級マンション 名前」で検索したら、ブリリア、フォレセーヌ、グランツオーベル、ラヴィアンパレス……。イメージやね、雰囲気やね、空気感やね。主にグラン、パーク、レジデンス、フォレストあたりが高級ブランドとして定着してるっぽい。単語の意味はわかるけど、パークってほんまに公園ある?  ヒルズフォレストタワーとか、丘で森でタワーってなかなか難条件ちゃいますか?

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柴崎友香(しばさき・ともか) 1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com/

権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:https://naohirogonda.tumblr.com/
風呂ンティア:https://frontier-spiritus.blogspot.jp/

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権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
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