よう知らんけど日記

第76回 ロスっぽいとこはどこ行ったらあるん?

2015.2.23 18:20

(引き続き思い出しよう知らんけど日記)

10月☆日
ロサンゼルス~。ハリウッドやね、セレブやね、子供のころから散々映画とかテレビドラマとかで見てきた街やね~。……なんやけど、アムトラックの駅からタクシーで数分のホテルまでの道のりと、ホテルの部屋の窓から外を見る限り、ロサンゼルス感ほとんどナシ。ホテルはダウンタウン(下町じゃなくて中心街)やねんけど、ロサンゼルスって車社会の郊外型の街なので中心部は空洞化してるんやろうね。周りを見ても、やたらと駐車場が目立つだだっぴろーい景色で、ビルがある割に人の姿が全然ない。大きいホテルやから1階にスタバがあったけど、水やら朝ご飯を買える店はあるやろか。
ホテルで出てきた焼きたてほかほかウエルカムチョコチップクッキー、めっちゃおいしいけど袋見たら300kcalて!! さすがアメリカやね~(でも日本に帰ってコンビニで売ってる大きいサイズのチョコチップクッキー見たら300kcalやった) 。
ここで、今回のカリフォルニア旅行を通じてのアメリカホテル事情。外国行くとき、なに持って行ったらええのかめっちゃ悩んで、そのせいで旅行がおっくうで全然行かれへんねんけど、わたしと同じく旅行はめったに行かない系のみなさんのご参考に、日本の平均的なホテルと比較して、今回泊まった中級に分類されてるホテルにあるもの:ドライヤー、アイロン、セイフティーボックス、アメニティセット(石鹸・シャンプー・コンディショナー・ボディクリーム(アメリカは乾燥してる?))。ないもの:歯ブラシ、スリッパ、寝間着。スリッパないのは結構困る。これは前回ニューヨークで学習したので国内で行ったホテルで使い捨てのスリッパ持って帰っといたのが役に立ちました。
そしてコーヒーメーカーがある。半分はネスプレッソみたいなカプセルぽんのやつ。置いてあるコーヒーやら紅茶のパックはスタバのシェア高し。そうそう、冷蔵庫も半分の確率でなかった。これも困った。夜にヨーグルトとか牛乳とか買って帰って翌朝ごはんにするということができへんかった。

10月☆日
近くの書店でイベント。徒歩15分くらいやねんけど、たぶん問屋街みたいなとこを通って、夕方で店閉まってるのもあるけど、怪しげというかさびしいというか、とにかくだだっぴろい道を歩いてる人がほとんどいない。とにかく短距離でも移動は車、歩いてるのは車が買えないか事情があって免許取れない人か。あと犬の散歩。ホラー映画に出てきそうな女の子の人形(ほこりだらけ)を大量に並べてる店とかベルトばっかり大量に売ってる店とか、怪しいし謎やしとびびりながらふと見たら、交差点のど真ん中の信号機から熊のぬいぐるみが逆さに吊されてるし、かなりの緊張感でした。
通りが1本違うと全然雰囲気が違って、ちょっと行くとおしゃれゾーンになり、その先に目的の書店が。古い建物を改装して、古本+セレクト、レコードに雑貨もあり。このあたりは日本とトレンドは変わらんね。この日は朗読のみで、古川日出男さんと柴田元幸さんの掛け合い朗読の迫力に圧倒されました。
店の前の横断歩道渡って次の通りに入ったらあかんでって言われて、ホテルのほうに戻りながらどこかで晩ごはん食べようとしてんけど、夜9時過ぎやのにごはん屋さん閉まってる! 中心部やのに人おらん感じ、郊外化が進んでるタイプの典型ですな。結局ホテルの下のダイナーへ。疲れ切ってたのでとにかくなんでもええわと思って「コロナ」を頼んだら、店員のにいちゃんが驚愕した表情でなにかまくしたてる。え!?  なんか悪いこと言うた? と戸惑ってたら、どうやら「なんでコロナやねん!こんなにクラフトビール取り揃えてるのに! コロナて! ないわ~」と言うてはったらしい。ええ人や。ほなおすすめのん、て言うたら、まるまる1杯試飲までさせてくれて、ああ、アメリカンやねえ、フレンドリーでうれしいなあ、とようやく緊張が解けたのでした。

10月☆日
水をどこで買ったらええねん問題継続中。前日イベント行く前にホテルの外を1周してみたら、いちおうこのあたりはリトル・トーキョーの端っこ、「コンビニ」て日本語で書いてある店があった。しかしやはりキオスクくらいの品ぞろえ。水はあるけど、甘くない飲み物がない。それなのに店の外に「アダルトDVDあります」と日本語で書いた看板だけはしっかりあるし……。
と思ったらホテルの裏の一角がちょっとしたモールになってて、紀伊國屋書店とかラーメン屋とかあって、 いきなり日本! そして1階には日系のスーパーが! おおお、入ったらそこは完全に日本。煎餅やらスナック菓子から日用品までなんでもある。コンビニ弁当に日本のサイズのおにぎり! 店員さんも日本語! これで明日の朝はええ感じのご飯食べられる!と思って翌朝意気揚々と朝ご飯を買いに行ったら、開いてない。9時半オープンて書いてあって、10時前やのに開いてない。遅れるとか臨時休業とかの張り紙もない。開くのか開かへんのかわからない。まるっきり日本の店と思ったけど、やっぱりアメリカやった。

10月☆日
南カリフォルニア大学でシンポジウムと朗読。その前に担当の先生が学内案内ツアーをしてくれた。ここは私立大学でお金持ちの生徒が多いことで知られてて、 ジョージ・ルーカスやらロバート・ゼメキスが卒業生の映画学科はテレビ局か? と思うような設備が完備、 わざと昔のハリウッドスタジオふうにデザインされた建物(テーマパークみたいな感じやね)で学生たちがきらきらしておりました。

それにしても、車で移動してても街の感じが全然つかめない。中心も周縁もなく、延々と無秩序に広がってて、インターネット的な空間かもしらん。ロスっぽいとこはどこに行ったらあるんやろうか……。

10月☆日
次の滞在は、UCLAのゲストハウス。緑に囲まれて環境はいいけど、周囲には店どころかひとっこひとりいません。でも、ゲストハウスの中に自販機が! そしてラウンジでお茶・コーヒー飲み放題。とりあえず水は確保やけど、大阪でも東京でも徒歩5分にコンビニ3軒みたいなとこでしか暮らしたことがないので、コンビニがないと落ち着かないというか不安というか。

UCLAは、広いキャンパスに芝生に噴水。中之島図書館を5倍ぐらいにしたような立派なドーム屋根建築で充実した図書館に歴史ある校舎。ちょうど新入生が入ってサークルの勧誘とかやってる時期で(UCLAてロゴが入ったスウェットをほんまに着てはる)、もちろんどこの校舎に行っても熱心に勉強してる学生さんがいっぱいで、やー、こんな世界があるのやなあと。まさに井の中の蛙やった感をがっつり味わいました。イベントではスティーヴ・エリクソンさんとお話しできて大感激です。

10月☆日
ロサンゼルス最終日、今回は移動時間が多いしホテルの周りをちょっと散策っていう環境でもなかったんで出歩いてなかってんけど、やっとまる1日空いたので、バスで出かけてみた。グーグルマップで調べると、バスの時刻表まで出てきて感動。アメリカの硬貨って区別つきにくいのでびびりつつバスに乗って(そして案の定バス代少なく払ってたと思うけど運転手さんは見逃してくれはった)、美術館へ。急行のバスやったので1つ停留所逃したらえらい遠くまで行って、歩いて戻ってんけど、とにかくほんま歩いてる人おらん。ちょっと住宅地みたいなとこに入ったら、Gated(区画ごと塀と門で囲われて住人しか入れない)が多くて、人の気配まったくなし。これは殺されてもだれも気づいてくれへんよなー、と写真も撮る余裕ナシ。わたしは特に人口密集地の育ちで、世田谷の住宅街でさえ人が少なくてさびしいと思ってるくらいやのに。
なんとかたどり着いたロサンゼルス カウンティ美術館(LACMA)、そんなに期待せんと行ったのに、なにこれ!? メトロポリタン並みのメガ美術館やないですか! えー、早く言うてよ! 1日じゃ全然見切れん。ドイツ表現主義が充実してるし、日本館は昭和のモダン着物展やってて南極観測船とペンギン柄とかスプートニク柄とかあるし根付けのコレクションすごいし、ロスやから映画関係も取りそろってて戦前のドイツ映画の展覧会やってるし、この日はプレオープンで見られへんかったけど世界最大の日本の鎧甲コレクション展やってるしで、熱出そうでした。
ほかにもハマーとかゲッティとか今回行かれへんかったとこも含めて、アメリカはお金持ちの自治体&大富豪のみなさまが「美術品こないに持ってまっせ~、どや!」競争を繰り広げて大変なことになってて、アメリカ行ったらとりあえず美術館行ったらええんやなと学びました。

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柴崎友香(しばさき・ともか) 1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com/

権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:https://naohirogonda.tumblr.com/
風呂ンティア:https://frontier-spiritus.blogspot.jp/

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権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
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