第85回 「なげやり倶楽部」を知ってますか?
4月☆日
桂米朝さんが亡くならはってしばらく経つけど、ほんまさびしい限りやね。落語でいちばん好きなのはエキセントリックで緊張感ありすぎの桂枝雀なのやけど、その師匠でもある米朝さんは上方落語を復活させた人やし、なんといってもあのゆったりしつつもちょっといけず感のある話し方が最高で、上方には米朝さんがおるんやからという安心感がずっとあった。昔の船場の人からしたら米朝さんのことばはは姫路弁できれいやないて言われたりもしたみたいやけど、やっぱり関西のええおっちゃんの話し方として愛着がある(天六の「大阪くらしの今昔館」の音声ガイドは米朝さんなのでぜひ行ってみてください)。
今は、大阪弁はメジャーになったといえばなったんやけど、どうしてもいうなれば「吉本弁」「漫才弁」のどぎつい言葉の印象が強いから、「ほんまはあんなんとちゃうのに」と忸怩たる思いの大阪の人は多い。もっと普通の、どっちかというと人のいいおっとりした大阪弁を全国の人に「こんなんです!」と聞いてもらうにはどうしたらいいかと思っててんけど、そや! ゴンチチのラジオがあるやないですか! NHKラジオで土曜日の午前中にやってるゴンチチの「世界の快適音楽セレクション」。おお、これや、これ! このおだやかで飄々とした響き! 関西以外の方、普通の大阪弁はこんな感じなんです。「松村さん」「三上さん」と呼び合ってて「です、ます」調なんもええし、東京で聞くとほんま落ち着くわぁ。マニアックな選曲もすばらしいです。
4月☆日
4月に入っても気温低め、雨模様。ロサンゼルスのからっとした青空がうらやましいなあ、と思うも、実はアメリカに行って知ったことで未だに信じられへんことがあるので聞いてください!「アメリカは外に洗濯物干せない」!!! えーっ! まじっすか、うそやろ!? もう一回聞くけど、うそやんな!? ってくらいに、なんじゃそら!な文化。1950~60年代に洗濯乾燥機を売るために「外に干すのは文化的じゃない」キャンペーンをしまくったために、すっかりそれが根付いてしまい、「洗濯物を干すのは乾燥機を買えない貧乏人」ということになり、うっかりベランダに洗濯物を干そうものなら近所の人に「貧乏人が住んでると思われて土地の値段下がるからやめて」と陰口・告げ口されるそうな。地方にもよるけど、こんなに天気良くて、乾燥してて、干したら2時間ぐらいですっきりぱりっと乾きそうやのに、干せないなんてむっちゃストレス。ていうか、乾燥機ていうても、どうせバカでかいのやろ、電気代もったいやいやろ、温暖化対策もなんもあるかい! と、ずっと釈然としないのでした。
4月☆日
大阪人て、オチのない話をいやがる、芸人でもないのにオチを求めてくるから困る、てな話はちょいちょい聞きますが、ほんで大阪人も自分で「オチは?」と言うてしまうとこがある。これ、大阪の人自身もわかってないかもしれないのやけど、求めてるのは決して「オチ」じゃないと思う。たぶん、会話が終わるのがいややねん。「オチはどこやねん」てツッコむことで、コミュニケーションを続けたいのです。
大阪(関西)の人にとって、しゃべることの目的はコミュニケーションやねん。思ってることを伝えるとか、意志表示は二の次で、とにかくなんか言うてたい。どうでもええことをやりとりし続けたいんです。ちょうど聞いてた米朝さんの落語のマクラでも、「どこいきますのん」「ちょっとそこまで」「そら、よろしな」て、なーんも言うてへん、よろしなってなにがよろしねん、て話をしてはるけど、ようするにそうなんですわ。
大阪に住んでるとそれが当たり前というか、それが「しゃべる」ってことやと思ってて、「聞かれたことに答える」が会話の目的ていう行動様式が存在するってことを、知らんと言うか、知っててもぴんときてないんよね。その調子で違う文化の人に話しかけるから、ちょいちょいめんどくさがられてしまう。オチはなくていいんです。オチを求めないでよ、でもなんでもいいですから、会話を続けてくれたら、大阪の人は喜びます。大阪の人は、やたらと「オチは?」と言ったり無理に会話を続けたりすると困る人もいるというのを忘れないようにしましょう。というか、会話がとぎれてもそんなに不安にならなくてだいじょうぶです。
5月☆日
お酒は全般になんでも好きなのですが、ずっと焼酎だけが未踏の大陸状態でした。種類が多すぎて入り口がわからないというか。ところが先日、広告の仕事で焼酎をいただきました。試しに飲んでみたところ、なにこれ、めっちゃおいしいやん! 黒糖焼酎の「里の曙」。「黒糖焼酎」って奄美大島でしかつくってないというのも初めて知りました。 なんていうか、全然クセがなくてすっきりしてて飲みやすい。水で割ると、水がおいしくなった! みたいになる。なんの料理でも合うし。めちゃステマみたいになってるけど、はい、ええもんいただきましたので、お礼に宣伝しています。いやでも、ほんまおいしかったのよ。これを機に、焼酎大陸を探検できそうやね。遭難せんように気ぃつけな、とベタなこと言うてみました。
5月☆日
穏やかに過ぎていきます、ゴールデンウィーク。天気ええし、電話もメールもないし、世間様がお休みの時にどこにも行かないで仕事するの最高。と、WOWOWで「パッキャオVSメイウェザー」という世紀の一戦の生中継がありまして、WOWOW入っててよかったーということで、朝10時の放送開始から構えておりましたら……いつまでたっても試合始まらん。開始は昼過ぎ、引っ張り過ぎやろ! それで、同じくWOWOWの別チャンネルでやってる『獄門島』見てたら、これがめっちゃおもろい! 変なカット割、変な寄り、大仰なセリフ、急展開……すべてが笑かすために作られてるんちゃうか、と思うほど爆笑に次ぐ爆笑でありました。ええもん見た。
そして世紀の一戦のほうは、なんか釈然としない試合展開でパッキャオ負けて悲しいです。
5月☆日
NHKラジオの収録。「松尾堂」という松尾貴史さんが本を紹介する書店という設定で、アシスタントは加藤紀子さん。加藤紀子さんは同い年でなんとなく親近感あったので、お会いできてうれしい。かわいいしお話ししやすくて素敵な人でした。元国土交通省の竹村公太郎さんと地形やら街の話を中心に展開しました。
前日、松尾貴史さんにお会いするということで、なんの話をしようかと考えてたら、ふと思い出した。「せや、なげやり倶楽部に出てはったやん!」 みなさん、知ってますか? 『なげやり倶楽部』。知ってる人がほとんどいないのですが、1985~86年にかけて3ヶ月だけよみうりテレビでやってた謎の番組です。中島らも、竹中直人、シティボーイズ、いとうせいこう、と今考えたら豪華なメンバーで不条理コントとか 「不幸のつかみどり」「ちくわの穴を覗いてください」ていう企画とか、えらいシュールでわけわからん番組やったんですわ。夕方やってたし、超テレビっ子やったからたまたま見て、大変に衝撃を受けまして、学校(小6)の友達ともネタにしてたもんです。いやー、ようあんな変な番組放送しとったなー、と思い出しながら、収録後に松尾さんに聞いてみたところ、深夜枠のつもりで出した企画が土曜の夕方しかあいてないということで放送が決まり、時間帯が時間帯だけに視聴者として狙ったわけではない小学生の間で話題になってた、とのこと。自由な時代やったねえ。今の視聴率至上主義、みんなに受けたい無難主義では絶対無理な番組やね。ちなみに松尾貴史(当時はキッチュ)さんは「ぶぶ漬け招待席」という、米朝さんの「味の招待席」のパロディでゲテモノ茶漬け紹介コーナーを担当してはりました。あー、もっぺん見たいなあ~!
プロフィール
柴崎友香(しばさき・ともか)
1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com/
権田直博(ごんだ・なおひろ)
1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:https://naohirogonda.tumblr.com/
風呂ンティア:https://frontier-spiritus.blogspot.jp/
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