よう知らんけど日記

第86回 なんやねん、マルサラって。

2015.8.18 12:32

5月☆日
ネイビーが流行ってる。1年ぐらい前から流行ってて、どうもまだ続くらしい。わたし、どうにもネイビーが嫌いなんです。それやのに、このネイビー流行りのせいで、いつもやったらたとえば白、グレー、黒、とあるはずの洋服のカラーバリエーションが、白、グレー、ネイビー。たいてい買うはずの黒がない!(手持ちの服の8割は黒です)。こういう感じのシャツがほしいのに、このデザインええ感じやのに、なんで黒やなくてネイビーなんや! ということが続いてます。

高校の時に友達が「ギンガムチェック嫌い、ていうか腹立つ」て言うてて、その表現おもろいな、と思ってんけど、確かにわたしもネイビーは「腹立つ」の域やなあ。単に個人的な好みなんやけど。どうも、小中学校時代の制服やら体操服&指定グッズの猛烈なもっさり感を連想してしまうみたいです。ところで、最近、その同級生に会ったので「そういや、昔、ギンガムチェック腹立つって言うてたやん?」て聞いてみた。そしたら「言うてたなー。腹たたへんようになったん最近やわ」。最近まで腹立ってたんか! ほんで今はだいじょうぶなんや!「なんでやろ。丸なったんかなー」て言うてました。わたしも丸なってネイビーが着れるようになる日が来るのやろうか。でも黒が好き。ネイビーあってもいいから、黒も作ってください!

5月☆日 
しかし色というものは、かなり「流行」ががっちりあるものでして、確か流行色協議会みたいなんがあって決めてるんやんな。流行りといいつつ、誰かが流行らせてる人工的なもんなんよね。2、3年前に決めて、アパレルメーカーはそれを参考に物を作る。「青」とかじゃなくて、「ピーコックブルー」「サンドベージュ」みたいな細かい色味指定。だから、どこのブランドも同じような色展開になる。せやから、意外にごく定番のはずの色がほしいと思ったらみつからへんのよ。このあいだ急に真っ赤なTシャツがほしい、朱色寄りでもなく、ピンクやえんじっぽいのでもなく、ど真ん中の赤! と思って探してんけどないねんなー、これが。色って選べるようで選べない。ちなみに2015年春夏のメンズ・ウィメンズ共通の流行色は「クラシック・ブルー」「トーステッド・アーモンド」「マルサラ」「グレイシャー・グレー」だそうです。なんやねん、マルサラって。

5月☆日 
世田谷文学館で朗読イベント。『春の庭』が世田谷の家の話ということで、主にそれを朗読するのやけど、1時間まるまる朗読を聞くのはお客さんもちょっと集中できはれへんやろなと思って、小説や世田谷に関する話を挟みながらすることにした。トークイベントは毎月1回ぐらいはやってるんやけど、たいていは2人かそれ以上での対談形式。一人でしゃべるのは、ちょっと慣れてきたけどまだまだ苦手。基本、一人でしゃべるって不自然なことじゃない? 誰に向かって話したらいいかわからんねんなー。講演得意な人に教わりたいわー。誰に聞いたらええんやろ。とにかくなんとか朗読としゃべり部分をうまいこと配分できてほっとしました。当日は、大阪出身、市岡高校出身(市岡愛はほんますごいわ)ていう方が何人かいてはって、いつも思うねんけど、大阪でもっと仕事があったら地元で暮らしたい人ようさんおるのに、というか、どの地方もそうやんね。東京で受ける取材なんかで、編集さん、ライターさん、カメラマンさん、全員関西の人のことが何回もあって、もうここ関西でええやん、て思う。
世田谷文学館、さすがに世田谷らしくこないだは「岡崎京子展」やってたし、この日は「植草甚一展」といいセレクションで、緑に囲まれた居心地のいい場所です。

5月☆日
40年も生きてますと、昔と変わったなあ、と思うことっていくつかあって、たとえば煙草吸う人はほんま減った。15年ぐらい前までは飲み会やったら周りは全員煙草吸うてるぐらいの勢いやったのに、今は逆にだれも吸えへんこともめずらしくない。お酒も飲む人減ってるような。

ほんで、昔はこれなかったよなーと、思うのものの1つがフットカバー。浅い靴下ね。今回はなんや洋服ネタ多いけど。あれもたぶんこの15年ぐらいやんね。最初はスニーカーソックスみたいなんから始まって、だんだん浅い、足の指だけ隠れるみたいなパンプスイン用のがでけた。その前は、女子はストッキング履くのが普通やったから(わたしはとにかくストッキングというものが嫌いで、会社員してるあいだつらかったことの一つがストッキング、っていうか途中から靴下にローファーやったけど)、フットカバーができたのはナマ足ブームがあったからやね。男性も、石田純一やらラモスやら裸足に革靴流行ってたときもあるけど、浅い靴下できてよかったんじゃないでしょうか。ずれない、脱げない、さらに浅くてパンプスから見えない、といろんなんが出てるんやけど、最近買うたやつが確かにずれへんのやけど、素材と滑り止めのせいか「キュウ、キュウ」て鳴るんですわ。ピコピコ鳴る子供の靴みたいで恥ずかしい。もしくは谷崎潤一郎『細雪』の「この帯、キュウキュウ鳴るねんが」か!とツッコんでまう。あの場面、ええよね。でも、歩く度に鳴る靴下は、いい大人やし、さすがに履けません。
そうそう、『細雪』の姉妹がよく使う相づちの「ふん」ていうやつ、「ふんっ!」やなくて、「ふぅん」ていうか「すん」ていうか頼んない「うん」やんね。気になる方は、関西の人をつかまえて実演してもらってください。

6月☆日
大阪で市岡会。高校の同窓会の、歴代卒業生参加の総会。東京の会はこの何年か参加させてもらっててんけど、大阪に行くのは初めて。大阪の高校やから、大阪の方が当たり前やけどメインで、めっちゃにぎやか。『ちちんぷいぷい』に出てはる毎日放送の石田英司さんが卒業生ということで、この日は講演してくださいました。さすがに毎日テレビに出てはる人は人気がすごい。「見てますよ~」と次々に参加者がやってきて記念撮影。お話ももちろんおもしろい上に結構脱線したスピーチがきっかり30分で終わったところも、さすがテレビの人や! と圧倒されました。お話しできて楽しかったです。

市岡会の行事では、舞洲にある「市岡の森」でのお花見と、あといちばん気になってる「豚汁の会」ていうのがあって、来年こそぜひ行ってみたい。「豚汁の会」は高校で豚汁食べるらしい。そのままやがな! どういう経緯でそんな会を催すことになったんやろか。

6月☆日 
やってきました、ROVOの野音の季節です。1年間、この日を楽しみに働いてるといっても過言ではありません。いつもはだいたい5月なんやけど、今年はほぼ夏至の日ということで、最後に登場のROVOが始まってからも明るい。心配してた雨もええ具合にやんで、水色からだんだんと暮れていく空の下でのROVOは音と空気がいつもにまして一体化して世界に広がっていくようで、とっても気持ちがよかった。ハナレグミ with U-zhaan とYOUR SONG IS GOODもめっちゃ楽しかったです。ほんまは5月にあった京都メトロのも梅田シャングリラのも行きたかったなー。次のROVOまでがんばって生きよう。

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柴崎友香(しばさき・ともか) 1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com/

権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:https://naohirogonda.tumblr.com/
風呂ンティア:https://frontier-spiritus.blogspot.jp/

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権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
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