よう知らんけど日記

第89回 『タモリ倶楽部』に出たいです!

2015.10.30 12:35

8月☆日
前回の『よう知らんけど日記』でちょっと書きましたが、7月あたまからいきなりものすごく暑くなると、ゲリラ豪雨多発やったり、暑さの勢いが長続きせえへんくてお盆過ぎたあたりで涼しくなったりするよなー、と思ってたら、まさに。お盆終わり頃来た台風とともに、いきなり暑さがしゅーん、となくなった。前半暑すぎると、夏が早く終わる法則、少なくとも関東はそうやな。大阪、京都あたりはもうちょっと遅くまで暑そうな気もする。

暑さの勢いどころか、あのぎらぎら太陽が幻のように、ひたすら雨、雨、雨。気温差ありすぎて過ごしやすい通り越して、肌寒い。関東はアブラゼミやミンミンゼミが8月になってから鳴き出すから、今年は蝉の鳴きどころがなかった。ツクツクボウシとか数えるほどしか聞かんかった。何年後かに蝉が少ない年があるんちゃうかなあ。

8月☆日
『週刊現代』の「我が生涯最高の10冊」ページの取材。おすすめ本を紹介する取材やアンケートって自分の好きな本を紹介できるのはとてもうれしい、恵まれた機会なんやけど、ベストを決めるのってめっちゃ難しい。テーマとかジャンルとか絞ってあるとまだしも、「生涯最高の1冊!」「人生を変えた1冊!」みたいにばーんと言われる感じがいちばん困る。劇的に1冊の本で人生変わったら話としてはおもしろいけど、小説好きなら好きなほど、あれはすごかった!って本、いろいろあると思うねんなー。

10冊ぐらいあると、あれの次にこれを持ってくるのもおもしろいなー、て選び方もできるので、今回の取材は楽しかった。担当のライターの方、10年以上前に『きょうのできごと』の映画公開のときにインタビューしてくださって以来、何度か取材受けてるのですが、「この小説、どういうふうにおもしろいのかよくわからなかったんですけど」とストレートに聞いてくれはるのがかえって話しやすかった。そして、原稿の校正の時に、柴崎さんの話を聞いてから読み直したらだいぶおもしろくなりました、とメールに書いてくれてはって、やっぱりこういうのはうれしいよね。

8月☆日
美術家のミヤギフトシさん主催で、青木淳悟さんと三人で「物語のなかで語る『私』」というテーマでトークイベント。沖縄出身で、記憶や出会った人々をテーマに写真や映像作品を作り続けてるミヤギさんの視点も興味深かったし、ありそうでなかった青木淳悟さんとの対談が初実現したのも楽しかった。青木さんは今年のはじめに亡くなったお父さん「しょうちゃん」が描いてた絵が大量に出てきて、スライドを見せてくれてんけど、それがもうヌードコラージュ風景画という独自のジャンルですごい破壊力でした。画集やTシャツを作って売ってるそうなので、興味ある人は検索してみてください。

 

そして、青木淳悟さんの最新刊『匿名芸術家』は、デビュー作『四十日と四十夜のメルヘン』の創作秘話? を青木さんらしいねじれ具合で語った小説、かつその小説の登場人物(田中南)の作品として『四十日~』が所収されてるねんけど、その中に「つまり彼は自ら発見したある修道士の手記を翻訳し、それに様々な手を加えて小説に仕立て上げているのだ(!)」て書いてあって、これって留学生を受け入れた高校教師の日誌を小説化した青木さんの2011年の作品『私のいない高校』やん! そのままやん! デビュー作で8年後に書く小説を予言してるやん! と大興奮し、トークの場で聞いてみたら、青木さん自身も全然気づいてなかったし、今まで誰にも指摘されてないとのこと! 第一発見者やん! なんかめっちゃうれしい! というのが、この日のわたしのハイライトでありました。

8月☆日
近所のスーパーで夏野菜が全然ない。毎年夏になると売られる真っ赤に売れて特大サイズの箱入りトマトを楽しみにしてたのに、顔色悪っ! って感じのトマトしかない! ズッキーニやらパプリカやらグリーンアスパラやら買いたかったのに、売ってない! なすびもキャベツもきゅうりもめっちゃ高い! 夏は終わってもうたのやなあ……と雨で薄暗い空を恨めしく眺めました。

8月☆日
夏野菜なくてさびしくなってたら、明け方には寒くて目が覚めた。あまりのことに毛布出しましたよ、8月やのに! ほんの2週間前まであんなに暑かったのが幻みたいや。このまま夏はどこ行ったんやって感じで終わってしまうのでしょうか。1回くらいはまた暑くなりそうやけど。

8月☆日
『東京人』11月号の「東京『地理』散歩」特集のために石川初さん、小林政能さんと地理座談会。「地理」と一言で言うても、鉱物・地学系から入った小林さん、造園(ランドスケープデザイン)から入った石川さん、都市の成り立ち、地域文化から興味持ったわたし、とばらばらなのが、地理のカバーする範囲の広さを示してておもしろかった。地理ってあまり脚光浴びない地味な分野かもしれないのですが、人間が暮らすってことはどこかの土地の上にいるってことで、人間の歴史や生活や産業やすべての活動と切り離せない重要な学問やと思うんですよ! 力説!
座談会後、写真を撮るために日本水準原点に移動。国会議事堂のすぐ前にあるのもへえ~、やったんやけど、そのとき乗ったタクシーが大当たり。運転手のおっちゃん、いきなり「さて、国会議事堂のてっぺんは何メートルでしょう?」とミニクイズが始まり、さすがは高低差に強い小林さんと石川さんが即答すると、「正解です!」と猿がシンバル鳴らす人形まで用意されてました。ええなあ、こういうおっちゃん(そしてあっさり正解してしまう高低差のプロたち)。

石川さんは慶応大学大学院教授でもあるねんけど、「東京スリバチ学会」「東京ピクニッククラブ」と楽しげな会をやってはるのと、Twitterのダジャレ攻勢がなかなかの威力で楽しませてもらってたので、お話しできてうれしかった。一方の小林さんは、日本地図センターの研究員で『地図中心』の編集者でもあって、まさにこの地図センターで『地図中心』の東京大空襲の記事で海野十三の日記に出会ったことが『わたしがいなかった街で』を書くきっかけになったんですよね。さらに小林さんは、「境界協会」「地図ナイト」と名前だけでおもろい会を主催してはって、『タモリ倶楽部』出演歴があるのが超うらやましい。
わたしは『ブラタモリ』で解説するほどの専門的知識はないから、やっぱり『タモリ倶楽部』やなー、出たいのは。芥川賞のときの記者会見で『タモリ倶楽部』に出たいです! って言うたらよかったなー。
*ちょっと告知を。11月10日~29日まで、奈良県立図書情報館で「りす写友会」による写真展「ことほぐ(寿ぐ)」に参加します。パノラマ写真の写真展です。14日(土)には、佐野史郎さんと朗読イベントをしますのでぜひお越しください(朗読会は要申込です)。
写真展の詳細はコチラ→http://www.library.pref.nara.jp/event/1758

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柴崎友香(しばさき・ともか) 1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com/

権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:https://naohirogonda.tumblr.com/
風呂ンティア:https://frontier-spiritus.blogspot.jp/

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