第95回 大丸心斎橋店のすべてが大好きでした。
11月☆日
「中之島どくしょ会」イベントでアメリカの作家・レアード・ハントさんとその最新刊『優しい鬼』を翻訳された柴田元幸さんとトークイベント。その前に、ハントさんを大阪観光にご案内。古いものが残る場所がいいとおっしゃってたのと、ハントさんの小説を読んで、場所の過去や歴史、普通の人の暮らしが感じられるところがいいなと思って、一心寺→四天王寺→大阪天満宮&天神橋筋商店街をご案内。大阪天満宮の入り口のすぐ前には、すぐ前に川端康成生誕地がある。川端康成って、あんまり大阪っぽくないのか大阪の人にあんまり注目されてへん気がするねんけど、後に建て替えられた料亭も歴史があってなかなか風情がある。川端康成の作風からはこんなベタなところで生まれはったのやなーとちょっと意外。ハントさん、川端康成が大好きでここだけ記念写真を求められてご案内してよかったとうれしくなった。[中村屋]のコロッケも好評(ていうか、わたしが久々に食べたかってんけど)、中之島付近の風景も楽しんでもらえて、ほんとによかったです。
「中之島どくしょ会」のイベントは、すごく熱心に読んできてくださった人ばかりで、質問も深く読み込まれたとわかる興味深いものがたくさんでとても充実した時間を過ごしました。ハントさんの『優しい鬼』は、イベントでハントさんが自身のおばあちゃんの語りに影響を受けたというのも納得の、誰かの話にひたすら耳を傾けてるうちに世界が広がっていくような感覚。何の予備知識もなしに読んでみることを、そして2度読んでみることをおすすめします。歴史に埋もれそうな遠い人の存在を実感するとともに、自分の偏見にも気づかされる1冊です。
12月☆日
小説の資料の意味もあって、昔のドラマやら写真やら映像やらばっかり見てる。意外にビルが多いなーとか、車は昔の方がかっこええなーとか、、男女ともにもっさりしてるな~(そのわりに大胆ビキニで駅前で御神輿担いでたり)とか。女優がずば抜けて美しい一方で街ゆく人は垢抜けない。今は、女優も身近なルックスが好まれ、普通の人も全体にセンス良く、小綺麗になり、平均的になったのかなと思う。
わたしが昔の映像やら写真やらを見るのが好きな理由は、懐かしいとか、昔はよかったとか、そんな感じではぜんぜんない。むしろ、昔、ひどいなー、それはあかんやろ、と思うことのほうが多い。結構派手やん、ミニスカート短すぎるやろ、みたいなこともようある。「懐かしの昭和」的に語られる「清く正しい昔」にすごーく違和感があって、それは自分自身の記憶もあるし、年輩の人の話や小説から感じる印象もあるし、実際のところどうやったんか知りたくて見てる。なんにしてもそうなんやけど、昔の方がよかったこともあるし、今の方がいいこともあるし、都会も田舎もいい人も悪い人もおるし、それだけのことやのに、昔のことってすぐに美化されて、モノは豊かになったけど心が貧しくなったとか、昔は人情があったけど今は家族の絆が薄れて、とかそういうテキトーで都合のいい類型化がほんま嫌いやねんなー。
前回書いた「物語」にも通じることやけど、悲劇にするにしろ、美化するにしろ、歴史も記憶も、簡単に書き換わってしまう。たとえば、バブルというと流れるジュリアナの映像ってバブル崩壊後で、わたしでもわかるんやからテレビ局の人がわからんわけないねんけど、バブルを表す(揶揄する)のに都合がいいから使ってるうちにあれがバブルってことになる(ジュリアナはむしろ、バブル崩壊後の「ええじゃないか」踊り的な現象やと思う)。自分も確かに生きてた体験した時代のことやのに都合がいいからと印象を操作してしまうことにあらがいたくて、昔の映像を見てるんかも。
12月☆日
紅葉が遅い、というか、今年はもう紅葉ないんちゃうかと思うほど、葉っぱが緑のまま。近年は暖冬のことが多いけど、ここまでなんは初めてのような気がする。
12月☆日
日本映画専門チャンネルで「大映テレビドラマ総選挙」ていう企画をやってて、大映ドラマ一挙放送中。『不良少女とよばれて』『積木くずし』を見てみたら、意外におもしろかった。グレた伊藤麻衣子(現・いとうまい子)や高部知子の斜めチークのすごいメークやら竹の子ファッションやら、セリフがおもろいとこばっかり覚えてたけど、年齢が親世代のほうに近くなって見てみると、グレた過程がけっこうリアル。『不良少女とよばれて』は、父親が神主で保守的ゆえに家の財産を失って借金まみれ、母親はその事に耐えられず「あんたさえ生まれてこなければ離婚できたのに」と娘に八つ当たり。『積木くずし』は親が有名人、病気のせいで髪が赤いことで目を付けられていじめられる。特に『積木くずし』はドラマ化後のあれこれ(家庭崩壊、覚醒剤で逮捕、病死……)を知ってるとさらにつらい気持ちになるのやけど、「娘の要求はいっさい聞かず突き放すように」とアドバイスする警察のカウンセラーと、その指導通りにしたり甘くなってしまったりブレまくりの夫婦の葛藤やいさかいがリアル。小学生の時は、「あたい」とか言うてチェーン振り回すのがコントになってたイメージが強かったけど、こういうしっかり描かれてた部分があってみんな見てたのやなあ、としみじみしました。
12月☆日
この日記にはネタになるようなことしか書かへんのやけど、今年は「大殺界やったし」ということにしたいような、個人的にはちょっとしんどいこと、つらいことが多い1年でした。
占いの取材をしてたときに、占いっていうのはなにかしら理由をつけたいのやろな、と思った。「物語」にも通じることやけど、得体の知れないこと、理不尽なこと、受け入れ難いことなどなどを「大殺界・厄年やから」「黄色いものを置いたら運気が上がるから」ていうことで納得したり自分に言い聞かせたりして、何とかやっていくためにあるんよね。それが、頼りすぎたり、占いやらお告げやらのために生活を犠牲にするとか人を非難するとか、本末転倒になってもうたらあかんのやけどね。
とにかく、できることからやっていくしかないね。
12月☆日
梅田シャングリラでROVO×ナカコーのライブ。11月の渋谷での公演があまりにすばらしかったため、どうしても見たくて、これだけのために大阪。こういうことのために働いてるんやん! て思う。
そして、やっぱり見に来てよかったー、と心底思う楽しすぎるライブでした。それに、渋谷よりだいぶ会場が小さいから音楽も熱気も濃縮されてるし、ステージがよう見えた。公演数が多いのは断然東京やけど、地方公演は近くで見れて、一体感を強く感じられるところがええと思うねんな。渋谷に続き、SUPERCARの解散公演以来で聴くことができた「WHITE SURF style 5」、一生忘れません。
12月☆日
翌日、大丸心斎橋店に行きました。わたしにとって、大阪でもっとも好きな、心の支えでもある場所。大丸の建て替えが決まったことは、今年のつらいことの一端でもあるのやけど、思い入れがありすぎて、なにも書けないというか言えないというか。とにかくわたしは、この建物と賑わいとここで買い物をする人たち、お客さんを迎えてくれる人たちのすべてが、ほんとうに好きで、憧れて、ここにすぐ行ける場所で育ったことを、徒歩3分のところで働いていたことを、誇りに思っています。建物の細部のすべてが美しくて、楽しくて、すばらしい。ニューヨークに行っても、ここより美しい建物はないと思いました。建て替え後の建物には、御堂筋側の外壁、玄関ホール、エレベーターホール、天井などは少なくとも残り、他の部分もできる限り受け継ぐとのことです。ただただ、できる限り、ほんの少しでもあの美しい建物が残り、心斎橋が、大阪が、みんなの好きな、楽しい場所であり続けることを、心から願っています。
プロフィール
柴崎友香(しばさき・ともか)
1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com/
権田直博(ごんだ・なおひろ)
1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:https://naohirogonda.tumblr.com/
風呂ンティア:https://frontier-spiritus.blogspot.jp/
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