よう知らんけど日記

第107回 ニューオーリンズといえば、ボ・ガンボス。

2017.4.28 10:00

カテゴリ:アメリカ

10月☆日
アメリカ食べ物小ネタ集。
スーパーでもちょっとした売店みたいなとこでも売ってる「Lunchables ランチャブルズ」てクラッカーセットが気に入った。クラッカー、それにちょうどいい大きさのスライスチーズ、ハム、各6枚、そしておやつ用のオレオかクッキーが3枚入ったセット。ハムやおやつ部分の種類で結構バリエーションがある。小腹が空いたときにぴったりですやん。おやつの甘いクッキーはなくてもええかもやけど、Twitterに写真あげたらやたら反応よかったし、日本でも売ったらええと思うなー。しかしアメリカはまじでこれだけで「ランチ」と言いそう。ジュース付きの漫画が描いてあるセットは子供の遠足に持って行きそうな感じやもんなー。


10月☆日
紅茶、コーヒーに入れるために牛乳がほしいのですが、普通の牛乳がない! 無脂肪、低脂肪2%、ホールミルクもビタミンD入り。もしくはコーヒー用にハーフ&ハーフていうクリームと牛乳混ぜたやつ。成分無調整が見あたらんし、メインで売ってるのは無脂肪か低脂肪。しかも学生会館の売店にあるのはミルク味のプロテインだけ(チョコ味、イチゴ味とバリエーション豊富)。大きいスーパーには牛乳あるけど、そこはそこで小さいのが2リットル、基本は4リットル(1ガロン)! そんなにいらんねん! アメリカ人はそないに牛乳飲むの?(もちろんほかのジュースも全部そのサイズ)、と疑問で学生さんとかに聞いてみて、シリアル食べるから、と言われて、そうかーとはなったけど今ひとつ納得がいかず、自分の勝手な推測としては、日本ほど賞味期限を気にしないのでは? 牛乳は開けて2、3日って思ってたけど、5日くらいおいてそうな気がする。アメリカの方、この件につきお返事ください。

10月☆日
魚はサーモンかタラみたいなんの日本の基準で言うとかなり大きい切り身しかない。肉は塊かミンチで、薄切りはない。あと、ないなー、と思ったのは大根、ごぼう、れんこんとか。なので、和食って作りにくい。青菜類もないしね(レタス、キャベツ、ほうれん草、水菜はある。白菜はときどきあるけどNappaと呼ばれてる)。水菜はサラダ用で、アメリカ人は生野菜が好きなよう。パーティーのときにはディップつけて食べる用の野菜が置いてあるのやけど、ブロッコリーが生でびびった。なんでもアメリカはでかいなーと実感するサイズやけど、果物はなぜかちっちゃい。りんごも桃もみかんぐらいの大きさ。日本の果物はなぜにあないにでかいのか。あとポテチも、日本のミニサイズくらいのが基本サイズやね。
そして、アメリカ人はディップが大好き。めっちゃ種類ある。野菜、コーンチップス、ベーグル、果物、なんでもディップつけてはる。

10月☆日
毎日なにをしているかというと、自国の文化のプレゼンがあり、朗読があり、テーマに基づいたパネルディスカッションがあり、朗読があり、演劇とのコラボがあったり、アフリカとかアジアとかの地域ごとのディスカッションがあったり、湖行ったり、ロデオ行ったり、図書館で調べ物したり、そして自分の抱えてる仕事をやったり……。

ところで、作家同士はスマホのWhatsAppっちゅうSNSでやりとりしてます。既読とスタンプのないLINEみたいな感じ。今時やね~、現代やね~。アフリカでも南米でもロシアでもMac使ってるし。 スマホはSAMSUNGが多いかな。
35人もいるのに洗濯機・乾燥機は各1つだけ。もちろんこれぞアメリカ! て感じに旧式の鉄の機械感がっつり、手でダイヤルをがつんがつんと回す代物。コイン入れるとこがまた、溝に1枚ずつ並べて、がっちゃん! と押し込む。当然、時間もやたらかかる。それで、今使ってんの誰? 次わしや! というのがWhatsAppでしょっちゅう流れてくるのでした。

10月☆日
そして二度目の旅行。今回はシアトルとニューオーリンズの二手に分かれ、わたしはニューオーリンズ組でございました。乗り換えたデトロイト空港は、建物の中をトラムが走ってて近未来感あってかっこよかった(なぜか案内板に日本語が)。日本から来るときに乗り換えたダラスの空港も上から見たら雪だるまを4つくっつけたみたいな形にトラムが走ってる、超特大空港で、アメリカの交通手段の飛行機率の高さを実感しました。そしてやたら遅れるし、変更になるし……。飛行機から見たミシシッピ流域の農業地帯が幾何学模様みたいでおもろかったなあ。グーグルマップに土地利用図もあったらええのに。

10月☆日
ニューオーリンズは、フランスやスペイン統治時代の建物や文化が残ってて、今までわたしが行ったことのあるアメリカの街とはかなり雰囲気が違う。住人の人種構成も黒人の割合がすごく高い(アメリカっていろんな人種が混じり合ってるイメージやけど、北部の州では白人が9割近くて黒人は1%前後やったりするとこもある)。観光地、歓楽街って感じで夜遅くまで賑やか。戦前からの路面電車(『欲望という名の電車』の電車)が走ってるし、道でジャズの演奏してるし。そして観光名所の一つが[カフェ・デュモンド]。大阪にもあるね、ベニエの専門店。あれ、日本の店で「ニューオーリンズに本店が」って書いてあっても「ほんまか~!?」とか思っててんけど、ほんまにあったわ。本店は、まじでベニエと飲み物しかない。そしてベニエはめちゃ適当でいろんな形(味は日本のとほぼいっしょでおいしいです)。ウェイトレスのおばちゃんていうかおばあちゃんがめっちゃ機嫌悪くて全然注文も取りに来てくれへんかったんやけど、同じテーブルの作家と割り勘した端数を切り上げてチップ多めに渡した途端ににっかーっとこれ以上ない笑顔で突然親切になったのが衝撃でした。

10月☆日
ニューオーリンズといえば、わたしにとってはボ・ガンボスやね。どんとが好きやったんもなんかわかるような気がする混沌具合。メキシコや南米、アフリカの文化の影響が強いから、ブードゥーショップいっぱいあるし、墓場ツアー大盛況やし、マルディグラていう死者の祭りパレードあるし、このときはハロウィン前やったから夜になったら馬車に乗った骸骨たちがお菓子詰め込んだゴム手袋投げつけてくるし。
大阪の人はニューオーリンズに馴染めそうな気がします。
そして、南北戦争博物館と第二次世界大戦博物館もすごく見応えがあるので、旅行先としてはかなりおすすめです。

10月☆日
二度目の旅行から帰ってきたら、寒くなってるし、時間が経つのが早いって感じるよ、と以前の参加者やプログラムのスタッフから言われてたのやけど、ほんまその通り。ニューオーリンズから帰った翌日からアイオワでブックフェスがあってパネルに参加やし、プログラムの終わりに向けてもろもろの発表やらコラボやらの準備もあるから忙しいし、急にさびしくなってくる。10週間なんか、ほんまあっという間やなあ。今までに知り合うことすら考えられへんかった国の作家たちと毎日過ごして、世界中にお友達ができた、ってすごくうれしいし財産やけど、距離が近くてまたすぐ会えそうな作家もたくさんいる一方で、ちょっと気軽に旅行に行くのは難しそうな国の人とはもしかしたらもう会うこともないかもしらんとか考えてしまうし。ボツワナのサファリツアーってなんぼぐらいすんのやろ、モーリシャスやキプロスって観光ツアーあるんかな、ベネズエラは今めっちゃ国が混乱してるしなあ、イスラエルってカジュアルに観光できるんやろか、南アフリカとかイラクとかはさくっと遊びに行くのは難しいやろうなあ、とか、あれこれ情報を検索してるとますますさびしくなってしまった。

10月☆日
そしてこのころ、やっと英語が結構聞き取れるようになり、というてもほんまちょびっとで、語彙力少なすぎて意味がわからんのはかわらんけど、音楽みたいやったんが言葉に聞こえる!ていうことが多くなる。日によって波があって、調子乗ってたらまたなんの話か全然わからんかった、の繰り返しやけど。3カ月ぐらい外国おったらしゃべれるようになる、みたいに言う人がいて、たまにはそんな人もいるんやろうけど、基本、無理やね。1年ぐらいおって、しかも毎日必死で勉強せんと無理やね。ここ数年外国関係の仕事が増えて、かなりしゃべれるやんて思う人でも(外国語しゃべれる日本人、日本語しゃべれる外国人、両方)3、4人がいっぺんにしゃべってたらわからんとか、初対面の人の言葉は聞き取りにくいとか、言うもんね。周りに日本語わかる人おらん環境にしばらくおってわかったのは、どっちかっていうと、言葉通じへんくてもなんとか生活はできる、っことやなあ。こまることはめっちゃあるけど。

柴崎友香(しばさき・ともか)
1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com

権田直博(ごんだ・なおひろ)
1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。
風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:http://naohirogonda.tumblr.com 風呂ンティア:http://frontier-spiritus.blogspot.jp/

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柴崎友香(しばさき・ともか) 1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com/

権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:https://naohirogonda.tumblr.com/
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権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
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