来年は倍以上、元気なだんじりを…岸和田で行基さん法要
「そーりゃ、そーりゃ」の掛け声と太鼓の音が数時間だけ響く、大阪・岸和田市の八木地区。コロナ禍で、毎年10月に行なわれる「八木祭礼」のだんじり(地車)曳行が自粛となるなか、11日、「久米田寺」(岸和田市池尻町)でこの地区ならではの行基参りの法要がおこなわれた。
寺の前に広がる府内最大のため池「久米田池」は、約1300年前に水不足に苦しむ住民のために、奈良時代の僧侶・行基が14年をかけ築造したもの。そのため、氏神様である「夜疑(やぎ)神社」への宮入とは別に、行基へ感謝をこめ、寺にだんじりを曳きこむ珍しい行事「行基参り」が定着している八木地区。
例年なら13台のだんじりが集まり、見物客であふれかえる光景が見られるが、今年は各町の代表者のみで謝恩法要がおこなわれた。そして一般客らに向け普段は非公開の行基堂の特別開帳が厳かに実施。
八木祭礼町会連合会・会長の清水次郎さんは、「今年は本当に静かですが、明治期から参拝してきた行基さんへの感謝の思いは変わりません。来年はいつもの倍以上、元気なだんじりが見られるといいですね」と話す。
さらに各町では、だんじり小屋を数時間だけ開け、化粧(飾り付け)をおこなうところも。だんじりの魅力といえば、職人の匠の技が光る彫刻。「額町」では、加藤清正を主題に迫力ある虎退治や九州征伐の姿、「池尻町」では酒呑童子や『忠臣蔵』の名場面が施され、毎年間近で軍記物や神話などの世界観を鑑賞するのを楽しみにする人も多いとか。
今年は鳴り物や曳行の練習はすべて自粛されたため、どちらの町でも青年団らが限られた時間のなか、小屋前で太鼓を打ち鳴らし、1年に1度の晴れ姿に笑顔があふれた。「不思議なぐらい、行基参りの日は晴れてくる」という関係者の言葉どおり、来年は青空の下でのだんじり曳行に期待が高まる。
取材・文/塩屋薫 写真/バンリ
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