100年ぶり、国宝・当麻寺西塔保存修理

2018.12.20 07:00

貴重な機会に、開場前からすでに数十人が列を作った「当麻寺」の見学会

(写真4枚)

現在、保存修理事業が進行中の国宝「当麻寺(たいまでら)西塔」(奈良県葛城市)。その最後となる現場見学会が12月16日・17日に開催され、2日間で768人の見学者が訪問。非公開の心柱などを見学した。

本格的な足場を組んだ「当麻寺」の解体修理は、明治44年(1911年)~大正3年(1914年)におこなわれて以来、約100年ぶり。本事業も2016年6月から開始され、4年半という長期間にわたる。同様の解体修理がおこなわれるのであれば、数百年後になるというから、とても貴重な見学会だ。

「素屋根(すやね)」とよばれる覆い屋のなかに入ると、まず塔の中心に立つ心柱を囲む覆い板が目の前に現れる。覆い板は平安時代のもので、たくさんの仏が描かれていた跡が残っており、心柱の特徴は何も固定されず自立し、頂上にある相輪の基礎となる「露盤(ろばん)」まで、周りと一切接触していないこと。当時の建築技術の高さに驚かされる。

斗と肘木によって組まれた「瓦屋根」の軒下部分。計10種の部材を組み合わせて瓦屋根を支えている

また、今回もっとも大変だったというのが「瓦屋根」部分。文化財の保存修理工事は保存が最優先されるため、可能な限り当時のものが再利用される。そのため、保存技術者たちは取り外した総数1万6千点という膨大な量の屋根瓦を、1枚1枚すべて打音検査と目視で破損状況を確認し、再利用が可能かどうかの判断をしなければならない。

「大正貳年修補」「奈良市般若寺町/早川勇次郎」と記載された大正時代の鬼瓦

この事業を取り仕切る、奈良県・文化財保存事業所當麻寺出張所の山下秀樹出張所主任は、「瓦の調査は本当に気が遠くなるような作業でした。時代によって作り方が異なり、癖もある。鎌倉時代の鬼瓦は、手作業で顔を造っていて、室町時代の瓦は焼きが良く丈夫で、時代を経てひとつひとつ違う表情を見せるところがとても面白い」と、当時を振り返る。

また、およそ100年ぶりに舎利容器が開封され、容器と納入物の調査もおこなわれた。山下主任は、「約100年前、当時の古社寺保存法のもとで保存修理されたときは塔の破損が激しく、創建時の姿を取り戻すための復元が最優先されました。その当時、最先端と言われた西洋建築の技術も見られ、関わった方々の試行錯誤がうかがえます。いつか数百年後の保存修理に関わる人たちのためにも、建造物と同時に伝統技術も保存し継承していきたい」と、本事業への思いを語った。

国宝「当麻寺西塔」の相輪、分解した状態。左から砲弾型檫管、水煙、宝珠、竜車、水煙

西塔は2019年の春までに足場が解体され、その後も基壇工事や周辺整備工事を進め、2020年12月に修理事業は完了する予定。また、2019年2月19日〜3月14日には「奈良国立博物館」(奈良市登大路町)で、本事業で確認された舎利容器の展示『金・銀・金銅製舎利容器公開』もおこなわれるという。

取材・文・写真/岡田由佳子

奈良県教育委員会事務局文化財保存事務所

展示『金・銀・金銅製舎利容器公開』
期間:2019年2月19日(火)~3月14日(木)
場所:奈良国立博物館・西新刊展示室(奈良市登大路町50)

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