稲垣と二階堂の『ばるぼら』、「リアルではなく摩訶不思議に」

2020.11.23 17:15

ばるぼら(二階堂ふみ)と出会ったことで変わっていく美倉洋介(稲垣吾郎)(C)2019『ばるぼら』製作委員会

(写真7枚)

「みんな『ばるぼら』をやりたいと思ってくれていたみたい」

──前から組まれてるスタッフさんの話にしますと、音楽の橋本一子さん。今回ごりごりのモダン・ジャズでちょっと驚きました。監督は昔、8ミリ作品でもチック・コリアの「マッド・ハッター」とか使われていた記憶がありますが、ジャズがお好きなのかなと。

普段から聞いてますし、好きです。ジャズは全般的に好きなんですけれど、今回は時代をずらすというニュアンスから50年代から60年代の、マイルス・デイヴィスとか、あのあたりの感じにしてもらいました。

マイルスのバンドに長くいたサックス奏者のウェイン・ショーターが一時期ヴードゥーとかの土着信仰にハマっていて、そういう頃の彼の音がいいと思ったんですよ。アフリカ神秘主義にはまっていた頃の彼の感じの音で。

橋本さんにそういう感じ出来ますか、って聞いたら「それ、私(の本来の音)です」って言われて。橋本さんも本来ジャズ・ピアニストで、そういう時代にやっていた人なんで。今までいろいろ橋本さんに音楽をお願いしてきて、どれも素晴らしいんだけど、今回は一番橋本さんがやりやすいものだと思います。

1985年に『星くず兄弟の伝説』で商業監督映画デビューし、『白痴』『ブラックキス』なども監督。ほかにも映像やイベントのプロデュースなども多岐にわたって活動

──しかも最後のクレジット見ると、すごいメンバーで(橋本一子<ピアノ>、類家心平<トランペット>、小田島亨<サックス>、井野信義<ベース>)。

大ベテランばかり。録音には全部立ち会ったんですけど、すごく面白かったですね。アドリブが利く人たちじゃないですか?

──あれは画を見せながら演奏してもらったんですか?。

画は見せてないんですよ。イメージだけ伝えて作ってもらったものなんですけれども。「男が堕ちていくところを」と言うとそういう風に吹いてくれるんですね。

「堕ちていきながら狂気に入っていくところ」と言うと「分かった」って感じで演奏してくれるんですよ。もうぴったりで。音楽を作ってもらってからそれに合わせて編集を僕が全部直すんですけれども楽しかったです。

──今時これほどジャズが流れる映画ってそんなにないよなぁ、っていう。しかもフリーフォームに至るまで盛りこまれて。

若い人とかは、初めて聞くって人もいるんじゃないですか?

飲んだくれで、美倉の家に転がりこむばるぼら(二階堂ふみ)。(C)2019『ばるぼら』製作委員会

──美術の磯見俊裕さんとは? 彼もやりたい放題な気がしますが。

磯見さんは昔からずっと「『ばるぼら』やりたい、誰か作んないのかなぁ」って言ってて。それこそ新宿の歌舞伎町の真ん中に「ばるぼら」って飲み屋があったんですよ。今はもう無くなって、ゴールデン街のお好み焼き屋に変わっちゃったんですけど。

磯見さんそこの常連で連れて行ってくれて。そのくらい磯見さんは原作に思い入れがあって、念願だったっていうから、いよいよこれやるとよって言ったらすぐやろうって。どんな条件でもすぐやろうって。そういう人が集まってくれたんですよ。

メイクの柘植伊佐夫さんも『白痴』で初めて映画界に入ったんですけれど、あるパーティーでばったり会って。僕はもう『ばるぼら』やることを決めていて、これは柘植さんがいいんじゃないかと思ったんです。

その話をしようと思っていたら柘植さんが僕の方に寄ってきて「昔からやりたい漫画の原作があるんだけど映画化の話ないですか?」って言うから「なんですか?」って聞いたら『ばるぼら』だって(笑)。

もうその場でOK。本当に偶然、みんなやりたいと思っていたみたいで。僕の心を読まれたのかってくらいそうやって集まってきました。

──やっぱり原作が好きな人多いかもしれませんね。

多いですね、すごく多いです。逆に下手なものを作ったら絶対に文句言われるだろうなって感じです。でも、完成して最初の試写をやったときに磯見さんが珍しく僕の目の前に座って「監督良かったよ~」ってすごく上機嫌なんですよ。あ、これは気に入ったんだなと思って(笑)。

『ばるぼら』

2020年11月20日(金)公開
監督:手塚眞
原作:手塚治虫『ばるぼら』
撮影監督:クリストファー・ドイル
出演:稲垣吾郎、二階堂ふみ、渋川清彦、石橋静、美波、渡辺えりほか

関西の上映劇場:シネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋、なんばパークスシネマ、京都シネマ、MOVIXあまがさき、ほか

©2019『ばるぼら』製作委員会

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