琵琶湖の悪者・ブラックバス、滋賀でおしゃれなグルメに?

2021.10.10 07:45

外来魚のブラックバス(オオクチバス)

(写真4枚)

スポーツフィッシングでもてはやされる一方、琵琶湖の生態系に悪影響を及ぼす外来魚として県も駆除をすすめているブラックバス。これまで「釣るか捨てるか」の存在だった魚が今、個人店でグルメとして注目されつつある。

通称ブラックバスと呼ばれるオオクチバスは、湖の在来種をおびやかす大敵として、1985年から滋賀県が駆除対策をおこない、その施策が功を奏し、2007年当時に444トンだった生息量は減り続け、2019年には211トンと2007年の半分以下に留まるまでになった(水産試験場調べ)。

「滋賀県立琵琶湖博物館」の学芸員で、外来魚の生態に詳しい研究者の中井克樹さんは「ブラックバスの積極的な駆除の継続がすすんだ結果。今は体長50cmレベルの大型のブラックバスがほとんどとれなくなっています」とも説明する。

実際、滋賀県民がブラックバスを一般的に食べるかどうかというと「否」だ。「大津市教育委員会」によると過去に給食を出していたことが教職員の記憶に残っているそうだが、少なくともここ3年は給食に使う食材のリストに挙がっていないので、提供されていないとのこと。ブラックバスは、「臭いが独特で食用に向かない」といわれ、食事としては「キワモノ」に近い扱いともいえよう。

◆今、ブラックバスがおしゃれメニューに!?

そんななかで、外敵とみなされてきた魚を資源として活用する動きが、ここ近年個人店で始まっている。

ファンからの声を受けて、定番メニューとして昇格したのが、3代にわたって琵琶湖で漁業を営む家族による「ビワコドーターズ」(滋賀県野洲市)。10年前に考案した「ブラックバスのサンドイッチ」(626円)を催事限定で出していたが、好奇心からオーダーする女性が続出。店主は、「ブラックバスは琵琶湖の魚の一種として捉えています。ですので、良し悪しではなくおいしい魚と提案したい」と、2年前に定番化した。

「BIWAKO DAUGHTERS(ビワコドーターズ)」の「スモークタルタルバスサンド」(画像提供:BIWAKO DAUGHTERS)

また、滋賀県湖南市石部に2020年にオープンしたブックカフェ「ドングリーブックス アンド ストーリーカフェ」では、ブラックバスをおいしく食べられるレシピを開発してメニュー化。「せっかくある琵琶湖の資源を使うことが大切。川魚とは違う独特の旨味と肉厚の身が気に入りました」と、ランチでアジアン料理「琵琶湖産ブラックバスのソテー&フォー」(1200円・予約優先制)を提供し、今や人気メニューのひとつなっている。

ほかにも、コース料理(8250円)にブラックバスを取り入れる、湖魚や地鶏料理のレストラン「淡海料理 トヴィン」(滋賀県大津市)の店主は、「ブラックバスのポテンシャルは高い。実際はスズキ科の魚で食べてみたらおいしいんです。ネックになる臭みのある皮は丁寧に下処理すれば、ちゃんと食べられることを伝えたかった」と話す。

これまで「ブラックバス」は食べるものじゃないと思ってきた滋賀県民の記者。フォー食べたさにオーダーしたのが初めてだったのだが、肉厚の白身はあっさりとしていて臭みはない。変な話だが、普通のお魚なんだという驚きがあった。これなら、ウェルカムと考え方を一転させられた。

ちなみに、琵琶湖の魅力を伝えるため「琵琶湖博物館」のレストランでは、2001年頃から提供。オオクチバスの天ぷらがのった「湖の幸の天丼」(1120円)などのメニューは、「食べられる場所がこれまでなかったこと、おいしく食べられるカタチを追求したとあって、長年好評です」と中井さん。

かつて琵琶湖の在来種をおびやかす大敵だった外来魚、ブラックバス。美食と呼ばれる琵琶湖の魚・ホンモロコやビワマスのように、おしゃれなご当地料理になりえるかもしれない。が、引き続き駆除の対象とはなっていること、大型の魚が捕れにくくなっている背景を考えると、今だからこそ楽しめるグルメともいえるかもしれない。

取材・文/中河桃子

「ブラックバス・グルメ」

「BIWAKO DAUGHTERS(ビワコドーターズ)」
住所:野洲市菖蒲230
時間:9:00〜17:00 水休
電話:077-532-7779

「DONGREE BOOKS & STORY CAFE(ドングリーブックス&ストーリーカフェ)」
住所:滋賀県湖南市石部西1−5-7
営業時間:11:30~14:00、カフェタイム14:00~18:00(ランチタイムは予約制。予約はホームページから)
電話:0748-69-5923(金~月11:30~18:00)

「淡海料理Tovin(トヴィン)」
住所:滋賀県大津市浜大津1-4-1 大津市旧大津公会堂 B1
時間:12:00〜14:30(土日のみ)、18:00〜22:00
電話:077-572-6356

「滋賀県立琵琶湖博物館」
住所:滋賀県草津市下物町1091
時間:10:00〜16:30(最終入館16:00)
料金:一般800円、大学・高校生450円
※事前予約制 月休館(祝日の場合は開館)ほか
電話:077-568-4811

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