【連載vol.15】見取り図リリー、印象派を観る

2022.2.20 12:15

クロード・モネの《睡蓮の池》。睡蓮の絵は約250点ありますが、そのなかでも当たり年といわれている1907年に描かれた作品

(写真8枚)

アート大好き芸人「見取り図リリー」が、色々なアート展を実際に観に行き、美術の教員免許を持つ僕なりのおすすめポイントをお届けするという企画「リリー先生のアート展の見取り図」でございます。今回は「あべのハルカス美術館」(大阪市阿倍野区)で、4月3日まで開催されている『イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜ーモネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン』です。

この展覧会は19世紀後半にパリから生まれた芸術運動・印象派の画家たちの作品と、その前後の時代の画家たちの作品を展示してます。この印象派、僕のイメージでは超ロックなんです。

新古典主義といわれる、ローマ・ギリシャの古代の美をもう一度復興させようとしていた時代が18世紀中頃〜19世紀初めにかけてありました。ジャン=オーギュスト・ドミニク・アングルやジャック=ルイ・ダヴィッド、もうそれは美しくなめらかで、技術的にこれ以上ないというような画家の時代です。

それを全てぶち壊し、もう反逆といってもいいかもしれません、それまでにまったく観たことのない描き方の集団が現れたんです。それが印象派です!

アングルやダヴィッドなどはまったく筆跡をのこさず、当時のアートの良し悪しを判断していたアカデミーといわれるフランスの公的な美術機関に認められてる描き方をしてました。それに対して、印象派は筆の跡は残しまくり、アカデミーを無視して自分たちだけで印象派展を開催するはで、ロックもロック! 今も十分インパクトありますが、当時はこんなもんじゃないくらいすごいインパクトだったんでしょうね。

また、それまで室内で絵を描くのが当たり前だったのですが、屋外でも描いていた印象派の画家たち。なので、この展覧会では鮮やかな光を描いた作品が多く、僕的にすごいなぁと思ったのは、まずカミーユ・ピサロの《エラニーの日没》。夕日に照らされて目を細めてしまいそうになる感覚に包まれます。光の魔術師です。寝室に飾ってしまうと絶対寝れません!

ちなみに、印象派という名は、クロード・モネが描いた《印象・日の出》という作品が由来になっています。そのモネによる《睡蓮の池》も観れるチャンスなんですが、ぜひ注目してほしいのは、ドイツ印象派の画家レッサー・ユリィの作品。今回の1番の見どころかも。 

陰と陽が見事に描かれていて、ひと目観てすごいと思ったレッサー・ユリィの《風景》。今後注目していきたいと思います

恥ずかしながら初めて聞いた画家なんですが、もうオシャレでモダンですごくクールな絵なんです。このガチガチの印象派アベンジャーズみたいなメンバーのなかで、東京で開催した展覧会のときには、ユリィのグッズがいち早く売り切れたそうです!

この展覧会の大トリに飾られた《赤い絨毯》や、街の夜の光を描いた《夜のポツダム広場》などありますが、僕がすごく好きなのは川と自然を描いた《風景》。なんていうか間違いなくオシャレなセンスを持った画家なんだろうなというのが見た瞬間にわかる絵でした。

ユリィはもっともっと日本で人気でますね。いっちょ噛ませていただけませんか? いやいや、アートにやらしい気持ちは厳禁です!(ユリィ応援大使になりますのでぜひ関係者各位よろしくお願いします)

そして、やはり巨匠ルノワールもはずせません。《花瓶にいけられた薔薇》は補色(あえて全く異なる色を使って引き立たせる技法です)を活用して、それはもう色鮮やか! 現物よりも、生き生きとした花へと生まれ変わらせている感じがしました。

ピエール=オーギュスト・ルノワールの《花瓶にいけられた薔薇》。やはりルノワールは華やか!

ほかにも、印象派が影響を受けた写実主義の作品やポスト印象派といわれるゴッホ、ゴーガン(僕は普段ゴーギャンと書いていますが、今回の展覧会の表記に合わせております)、セザンヌなどの作品もあり盛り沢山!

少し知識がないと解読のむずかしい歴史画などとは違い、印象派は景色、風俗、静物などを描いていて絵画の事をまったくわからない方も、この展覧会でアートに触れ興味を持つのはありだと思います!!

今回も学芸員の先生に説明をしていただきながら鑑賞してすごく勉強になりました。先生も独自の解釈をお話してくれたように印象派はさまざまな解釈ができるので、僕・私はこういう風に感じたというように、一人一人の感覚で光を受け止めればいいんだと思います。歴史画とかじゃないんで答えはないんです! 自分が感じるように感じればいいんです! 答えのないこの時代だからこそアートに触れて自分の中の美を見つけるのが大切になってくると思います。

最後なんかそれっぽい事言ってカッコつけてすいません。アートについての本で偉い人がこんな感じの事言ってました。ただただ美しく楽しい展覧会でした。

『イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜ーモネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン』

世界でも特筆すべき印象派コレクションを所蔵する「イスラエル博物館」より約70点を展示し、うち8割は日本初公開。パリ郊外のバルビゾン村で発生したバルビゾン派からはじまり、モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガンらの印象派、その後に続く前衛的なナビ派までを紹介。モネ、ゴッホ、ゴーガン、ルノワール、ユリィによる6作品を撮影できるのも貴重なチャンス。期間は4月3日まで、一般1900円、大高生1100円、中小生500円。

【見取り図リリーの近況】

今年も見取り図らしいコンテンツをYouTube『見取り図ディスカバリーチャンネル』でどんどんと更新していきます。時折生配信もやるので、Twitterをチェックを。また、「よしもと漫才劇場」をはじめ各よしもとの劇場に出演するほか、大阪、福岡、東京で『M−1ツアースペシャル2022』でも漫才します! ちなみに僕が着ているフーディーは、岸里への思いを込めてデザインした「KISI VILLAGE(岸里)」。「CLASSY GRAPHIC T−SHIRTS SYNCLAPH」でオンライン販売されてます。

『イスラエル博物館所蔵 印象派 光の系譜』

期間:1月28日(金)~4月3日(日)
時間:火~金10:00~20:00、月土日祝10:00~18:00 ※入館は閉館30分前まで
会場:あべのハルカス美術館(大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16F)
料金:一般1900円 大高生1100円 中小生500円
TEL:06-4399-9050

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