「失敗したほうが人生おもしろい」大阪ものづくり会社の情熱

2022.6.19 10:15

「失敗の部屋」で過去の開発商品を解説する原守男専務

(写真16枚)

■ 僕らの失敗は、しょげてる人の励みになると思う

──なるほど。ところで、旭電機化成の社内には、失敗したほうが人生おもしろいと書かれた「失敗の部屋」という名の展示室があるとか。こちらは、文字通り売り上げが芳しくなかった商品を展示しているのでしょうか?

いえ、廃盤商品を展示している部屋なんですけど、一度「失敗の部屋」なんてテレビ番組に取り上げられて。元はそんな名前じゃなかったんですけど、ほかのメディアからも「失敗部屋を見せてください」なんて言われるようになって、後付けで名前をつけました(笑)。

──そんな経緯があったんですね。ちなみに「失敗商品」の基準はあるんでしょうか。

失敗か成功かというのは、僕らの業界では境目が分かりにくいんですよ。そもそも「成功の定義はなんですか」って話です。たとえば、人件費や製造のために700万投資し、製品を売って粗利が700万出たとします。この場合、成功か失敗かは判断が難しいですよね。

廃盤商品や過去の懐中電灯などを展示している通称「失敗の部屋」

──確かにそうですね。

僕の場合は、投資した金額の回収ができたらとりあえず失敗ではないと考えています。販売さえ続けていれば、少しずつ粗利は増えていくので。いくら続けていても売り上げが増えないとなればそれは失敗ですけど、成功と失敗の中間は判断し辛いです。

たまに成功する商品があれば、それで赤字分をカバーする。だからある程度「稼ぎ頭」の商品があれば、失敗作もカバーできるんですよ。どこの会社もそうちゃうんかな。

──なるほど。だからこそ旭電機化成さんでは毎月のように新商品を発売しているんですね。

もちろん、今考えたら明らかな失敗作もありますけど「時期が早すぎただけで、今だったら売れているのかも」という商品もあります。例えば、車のハンドルに取り付けて、振動があれば音が鳴り響く盗難防止のアラームは「これは売れる!」と思ったんですけど、イマイチで。

でもその逆で、予想外の売れ方をする場合もあります。だから「いけそう」と思ったらどんどん商品化していけばいいんちゃうかな、と思いますね。あまりに投資額が大きすぎたら危ないですけど、ウチの場合は会社の命運をかけるほどの多額の投資になることはないんで。売り上げが悪くても「あ~失敗してもうた!」くらいで済むんですよね。

──そんな軽いノリで! なんだか元気がもらえる考え方です。

どこの会社も、きっと言わないだけでみんな失敗してるんですよ。でもウチみたいに、失敗してもいろんなことにチャレンジしてるのは必要なんちゃうかな。僕らの失敗を見てもらったら、しょげてる人の励みになると思いますよ。「この会社、どんだけ失敗してもめげんとやりよるで!」って。

取材・文・写真/つちだ四郎

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