関西人が愛する「旭ポンズ」、長年変わらないラベルの秘密

2022.12.31 20:15

関西人の食卓に欠かせないソウル我らの調味料「旭ポンズ」

(写真14枚)

関西人なら誰もが一度は目にしたことがあるだろう「旭食品」(本社:大阪府八尾市)の「旭ポンズ」。ラベルの真ん中に描かれた印象的なスダチは、見ているだけで爽やかな香りとキレのある酸味を想起させ、関西人の食卓には欠かせない逸品として知られている。

今回は、関西人のおいしい記憶に刻まれた「旭ポンズ」のパッケージに着目。長年変わることなく愛され続けるデザインの知られざる秘密を、同社の専務・高田雅規さんに訊いた。

■ デザインは先代社長の手書きだった

1948年創業の「旭食品」は当初、干しうどんやそうめんといった乾麺のほか、冷やしだしなどを販売していたが、年中を通して利用される商品として、先代社長・高田耕治さんがポンズの開発をスタート。1967年に「旭ポンズ」が誕生した。

芳醇な出汁の香りとキレのある酸味が特徴の味はもちろんだが、商品名を聞いただけで誰もが思い浮かべるあのパッケージは、隠れた名デザインといえるのではないだろうか。

実はこのパッケージ、字体・イラスト・カラーリングからすべて先代社長が手書きで仕上げたのだそう。しかし、先代社長の孫であり専務の高田さんは、「特にデザインの勉強をしていたわけではない」という。

本社で大切に保管されている半世紀前に先代社長が愛用していたノートには、デザインのスケッチがびっしりと描かれており、背が剥がれるほど使い込まれた様子からは、並々ならぬ情熱が感じられる。

先代社長が愛用していたというノートには、デザイン案がびっしり。背が剥がれるほど使い込まれていた。

ノートのほかに、「牛丼だしの素」や「中華スープの素」など、商品化されなかったものから、おそらくかつて販売されていた過去の知られざる商品、現在も販売されている「うどんだしの素」の歴代ラベルを見せてくれた。

どのラベルにも共通しているのは、最近主流の洗練されたデザインとはひと味違った、味のある温かみあふれる趣と、鮮やかな色使い、そして50年以上前に作られたものにもかかわらず今見ても色あせることのないかっこよさ。「旭食品」本社は、デザインの宝庫だった。

■ 実はスダチじゃなかった!? あの果実の正体

発売以来、その姿を大きく変えることのなく幅広い世代のおいしい記憶の片隅に残っているであろう「旭ポンズ」のパッケージ。改めて真ん中のスダチをよく見ると、左から右にかけて色が緑から黄色に変化している。

この色味の意味については、日頃からお客さんに尋ねられることがあるそうで、「実は『旭ポンズ』を作るのに使うスダチ・ユコウ・ユズ、この3つの柑橘類を表すのに色味が緑と黄色に分かれてるんです」と話す高田さん。

なんと、ずっとスダチだと思っていたあのイラストは、3種の柑橘類を1つにした架空の果実だったことが判明した。

左の男性が先代社長の高田耕治さん、右の女性が先代社長の奥様だそう。鍋を囲むテーブルには「旭ポンズ」の姿が。

先代社長がデザインに込めた思いについては、「あまり残すようなタイプじゃなかったので、現社長も知らないことが多いんです」とのこと。しかし唯一残されていたという鍋を囲んだ当時の写真には、今とほとんど変わらないラベルをまとった「旭ポンズ」の姿があった。

創業当初は「太子乾麺所」という名でスタートした同社だが、その5年後に現在の「旭食品」へと屋号を変更。「戦後の食糧難の時代に食品会社として開業したので、明るいイメージを持って付けた名前なんやと思います」と、社名の由来を明かす。

そういった背景もあってか、「やっぱり、会社のマークにもなっている旭マークは誇りですね」と、祖父の代から受け継がれるラベルデザインのお気に入りポイントを教えてくれた。

関西人の台所に欠かせない我らのソウル調味料「旭ポンズ」。日常になじみ過ぎて、ついその魅力を見逃してしまうが、先代社長のこだわりが詰まったパッケージのデザインにも注目してみてほしい。

取材・文/Lmaga.jp編集部 写真/本郷淳三

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