大阪の地で100周年、立ち飲み「赤垣屋」が愛され続ける理由

2023.8.10 07:00

2023年で100周年を迎えた「赤垣屋」(写真はなんば店にて)

(写真14枚)

街にはさまざまな居酒屋があるが、100年以上愛され続けているチェーン居酒屋はなかなかないのではないか。難波・千日前の本店をはじめ、梅田や京橋など大阪市内に7店舗を構える立ち飲み店「赤垣屋」は、今年100周年を迎えた。

■ 朝から晩まで絶えず客が訪れる「赤垣屋」

大正12年(1923年)、大阪・福島での酒販店ではじまり、関東大震災や不況、戦争、そしてコロナ禍という数々の試練をくぐり抜けてきた同店。朝10時から営業している「なんば店」には、朝から晩まで絶えることなく人がやってきては、思い思いに飲んで帰って行く。

取材した日に一緒になった常連さんは、「僕らはまだまだ新参者やで」と言いつつ、全員通いはじめて20〜30年! なかには毎日訪れるという人も。「赤垣屋」に通い続ける理由は? と訊くと、「仕事終わりに来たらホッとするねん」「店員さんみんな好きで、会いに来てる」「1人にもなれるし、仲間にもなれるから」など笑顔で話してくれた。

「赤垣屋」に通い続けて20年以上という常連のみなさん。「居心地がいいし、店員さんも話しやすい」

「赤垣屋」といえば、生中360円、どて焼2本300円、自家製ポテサラ160円などの定番をはじめ、月2回変わる季節のおすすめメニューでは、はもちり390円(7月)・・・と、安くて早いのにどれも本格的なクオリティなラインアップなどで知られるが、それは大前提。常連さんが口を揃えて言うのは「居心地が良い」ということだった。

「赤垣屋」のお客さんは半数以上がおひとりさま。でもスタッフと話をしたり常連同士で乾杯したり・・・殺伐としがちな立ち飲み屋で、この心地良さはどう作られているのだろう? 「赤垣屋」で20年以上働く、なんば店の大島 哲店長に話を聞いた。

ネオンサインが目印、千日前商店街にある「赤垣屋 なんば店」

■ 「どないしてお客さんに安く飲んでもらうか」

──100周年おめでとうございます。「赤垣屋」の「お客さまの心のオアシスであり続ける」という理念についてお聞きしたいんですが、これは創業当時からなんですか?

「心のオアシス」というのは3代目の現社長からなんですが、昔から大事にしていることは変わっていないと思います。

創業当初は酒販店だったんですが、大正14年(1925年)には角打ちをやっていたんですよ。でもその後に戦争があって酒の配給制度がなくなったときに、初代・尾崎政雄社長はタクシー会社をやったり、パチンコや遊戯場、中国で酒場をやったりと飲食以外のこともいろいろやったそうです。

その後、昭和24年(1949年)に千日前でまた立ち飲み店を再開したんですけど、そのときに社長が「お客さんから『ありがとう』って言われる仕事しかしたくない」って言うたらしいんです。

そこが多分ね、うちの創業の精神。飲食の世界っていうのは、お客さんが来てくれて、「お前のとこのお酒はうまいな。よかったよ。おおきに、ありがとう」ってお金払ってくれる。うちの1番大事にしてるとこですね。

大正12年(1923年)、酒類販売店「尾崎政雄商店」を開業(写真はなんば店にて)

──それにしても100年続くっていうのが、本当にすごいなと思います。戦争も震災もあったし、コロナもあって、どう乗り越えてきたのかをお聞きしたいんですが。

遡っていくと先代の時代になると思うんですけども、トータルして言えることは、やっぱりお客さまとの関係性やと思うんですね。

──信頼関係ですか。

はい。正直な商売してると思いますわ。先代もよく言ってたんですけども、嘘ついたらアカンでと。 たとえば適正価格。僕が20代ぐらいのとき、客単価を上げていきたいという思いがあって、「これ、もうちょっと、あと10円、20円取れまっせ」とか言ってたんですよ。でも当時の店長(現常務)が、「そんなんアカン」って。

「うちに来てるお客さんっちゅうのは、みんな1000円札を握りしめてきてんねん。それで会計が1020円、1030円ってなって『高い』って思われたら、次来えへんようになるんやから」っていう言葉をすごく覚えていますね。

そういう形で「どないしてお客さんに安く飲んで価値を感じてもらうのか」を考え続けてる。でもめちゃくちゃ安売りをするわけじゃないですよ。どうやって適正価格のなかで楽しんでもらうか・・・。正直さ、真面目さ、誠実さ。儲けたろやないかいって、そんな感じじゃないですね。

お客さんと会話しながらビールを注ぐ、「赤垣屋」なんば店の大島店長

──コロナ禍はどうでしたか。

コロナのときはキツかったですよ。全店休業したので、売り上げが一気に0になりましたからね。でもそこでオンラインで集まって、インスタグラムをはじめSNSのこととかみんなで勉強しました。あとはテイクアウトにチャレンジしたりとかね。

でも売り上げ0の経験をしたのは良かったと思います。僕らって立ち呑みメインでずっとやってきてるんですけども、それ以外のことって結果的に生み出せてないんですよ。

今まで先代が築いてきてくれた、僕たちの先輩たちがずっと作ってきてくれた商売のやり方に乗っかっていたということに気づきました。これは結構キツい現実でした。だから今、勉強していくことがこの先の5年後、10年後を作っていくとみんなで再認識して、新しい価値を作っていかなアカンと思っています。

立ち呑み 赤垣屋

「お立ち吞み処 赤垣屋 なんば店」
住所:大阪市中央区難波3-1-32
営業:10:00~22:30(LO22:15)、日祝10:00~21:30(L.O 21:15)
電話:06-6641-3384

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