そもそも「ヌン活」とは? アフタヌーンティーの定義から紐説いた
昨今のアフタヌーンティーは、日本独自の進化が止まりません。オリジナルの階段のようなティースタンドで提供されたり、お重に入っていたり、天ぷらが出てくるアフタヌーンティーもあるくらいです。もっと言えば、アフタヌーンティーとスイーツブッフェの境界も曖昧に感じるようなものも。こうなってくると、そもそもアフタヌーンティーってなに?という疑問が湧いてきます。
そこで紅茶やアフタヌーンティに造詣が深い、食空間の暮らしの文化が専門の大阪学院大学短期大学部の教授・土井茂桂子先生に、アフタヌーンティーの定義と未来を聞きました。
◆ 「定義」を教えて、アフタヌーンティーの基本
アフタヌーンティーが生まれたのは、19世紀半ばのヴィクトリア女王の時代。女主人がドローイングルーム(ゲストを招く客間)を設えて、タイミングよくお茶を注ぎながら、おしゃべりを楽しむ社交の場から続くイギリスの伝統文化です。
アフタヌーンティーの原型ともいえるティーフードは、フィンガーサンドイッチ(ビクトリア時代はきゅうりは貴族階級の人しか手に入れられなかったという背景があり、きゅうりのサンドイッチは必須)、スコーン(クロテッドクリームとベリー系ジャムを添えて)、ケーキ類(ヴィクトリアンサンドイッチなどの焼き菓子)が基本になります。この原型定義に近いものをフルアフタヌーンティーと呼び、近年のアフタヌーンティー「ヌン活」とは区別しています。
アフタヌーンティーは、「ヴィクトリアンスタイルのニュアンスを踏襲しつつ、良好なコミュニケーションをはかる」ことが大切なポイントだと土井先生は話します。
◆「映え」を意識した最近の流れ
一方、現在の日本のアフタヌーンティーは、食とファッションが融合したいわば「映え」を意識した演出に重点が置かれているイメージです。そのため、食べることを楽しむスイーツブッフェが混在している状態になっていることも理解できます。
「アフタヌーンティーといえばわかりやすいので、メニュー化している国は多いです。そのなかでも日本は、アフタヌーンティーという言葉が1人歩きしているのではないでしょうか。これからはアフタヌーンティーの『本質』を大切にしながら、新しいものが生まれたら面白いと思いますね。懐古主義的なものや、前衛的な面持ちを持ちつつもアフタヌーンティーの基本はおさえているというものなど、いろいろなパターンのアフタヌーンティーができると選択肢も増えて素敵かなと思います」
「最近では、『パーク ハイアット 京都』の『ザ リビングルーム』が、アフタヌーンティーをオマージュしつつ、日本の茶道的な精神を合わせた感じで楽しめるアフタヌーンティーを提供されていて、新しい形だと思います(※日本茶とのペアリングが楽しめ、スイーツやセイボリーはコース仕立てで運ばれてくる)」と土井先生。
◆ 新しいアフタヌーンティーとは?「喫茶時間」
アフタヌーンティーは豊かな喫茶時間の象徴ですが、あくまでも嗜好品なので、いろいろな選択肢のなかから自分に合うスペースが見つけられたらそれが一番。そんなお話を聞いていると、土井先生が以前からされているという家で楽しむアフタヌーンティーが新鮮に感じ始めました。
たとえば買ってきたものでも良いので、基本のティーフードをお皿に盛り付けて美味しい紅茶を用意すれば、アフタヌーンティーが完成します。お庭を望むドローイングルームをイメージして小さい生花を飾り、いつもは使わないようなナプキンを用意したら、アットホームで気取らない、でも特別な、親しい人とのアフタヌーンティーの時間がつくれます。最近の流れを考えると、むしろ「おうちアフタヌーンティー」が新しいのかもしれません。
取材・文・一部写真/太田浩子
協力/土井茂桂子先生
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