友達感覚で仏様を感じて…新感覚の「醍醐寺展」、大阪で開催中

2024.6.23 10:00

重要文化財『大威徳明王像』平安時代(10世紀)通期展示 上醍醐五大堂の五大明王のうち4体は焼失したが、この像だけは奇跡的に残り、創建当初の息吹を感じることができる

(写真8枚)

「大阪・中之島にパワースポット出現!」というポップなキャッチコピーと「桜ミク(初音ミク)」とのコラボレーションで開幕前から話題になっていた『開創1150年記念 醍醐寺 国宝展』が、「大阪中之島美術館」(大阪市北区)で開催中だ。

これまでにも『醍醐寺展』は国内外で開催されてきたが、大阪での開催は今回が初。真言宗醍醐派の総本山である「醍醐寺」(京都市伏見区)と大阪(大坂)は、「太閤さん(豊臣秀吉)」がキーパーソンとなり、実は関係が深い。というのも、「応仁の乱」(1467年〜)で焼失した醍醐寺の伽藍(下醍醐)の復興を支援したのが秀吉なのだ。

また醍醐寺は、俵屋宗達の重要文化財『猿楽図屏風』(後期展示7月24日~)など、近世の名画が数多く伝わっており「桃山期の美の殿堂」ともいえる存在で、国宝7万5537点、重要文化財430点など約15万点もの文化財を所蔵しているというから驚きだ。

今回はそのうち国宝14件、重要文化財47件、計約90件が全3章構成で一挙に公開されており、国宝と重文ばかりの作品を中心に、醍醐寺の歴史と美術の全容を通覧できる内容となっている(会期中展示替えあり)。

『豊臣秀吉像』 江戸時代(18世紀)通期展示 応仁の乱で焼失した醍醐寺の伽藍「下醍醐」の復興に尽力した立役者である太閤さん

■ 同展の大きな3つの特徴とは?

俵屋宗達 重要文化財『扇面散図屏風』前期展示(7月21日まで)

なかでも、同展を醍醐寺復興に尽力した太閤さんのお膝元・大阪で、且つ、近現代美術館での開催とあって、同展には大きな3つの特徴がある。

1つ目は、仏教美術の展覧会としては新感覚でポップなイベントやコラボが多い点。スペシャルコラボの「桜ミク(初音ミク)」のAR体験や音声ガイドのスペシャルトラック等だけでなく、「ご祈祷済み」と書かれたユニークな限定グッズの販売のほか、7月15日には醍醐寺僧侶による声明とのコラボで、今までにない感覚の仏教体験ができる「デジタル曼荼羅アート&ミュージックライブ」が開催される。

さらに、2つ目の特徴として、カジュアルで親しみやすい雰囲気を出しつつも、同展の監修を務めた大阪市立美術館の内藤栄館長を含む、4名の専門家がしっかりと学術協力をしているため、従来の仏教美術ファンの期待を裏切らない見応えのある展示内容だ。その一例として、海を渡る文殊様が日本独特の表現だという国宝『文殊渡海像』(前期展示)を「美少年ぶりは別格」と推しているので、こちらは見逃せない。

国宝『文殊渡海図』 鎌倉時代(13世紀)前期展示(7月21日まで) 「美少年ぶりは格別」と紹介された文殊菩薩のお顔に注目を

3つ目の特徴は、大阪なだけに「太閤秀吉がもうひとつのテーマ」である点だ。第3章では、「醍醐の花見」を彷彿とさせる演出の空間が広がり、秀吉と親交が深かった醍醐寺座主の義演(ぎえん)の紹介や俵屋宗達の重要文化財『扇面散図屏風(せんめんちらしずびょうぶ)』(前期展示)などの近世名画の数々が展示。そして、『麗子像』の作者で有名な岸田劉生の孫で画家の岸田夏子氏が描いた『醍醐寺の春』といった近現代の画家による醍醐寺の桜を一緒に堪能できるのも、近現代アート作品を得意とする「大阪中之島美術館」らしさが出ている。

新しい角度から、醍醐寺の寺宝を楽しめる同展について、同寺の壁瀬宥雅(かべせゆうが)座主は、「今の若い方は仏教や仏様をちょっと遠く感じておられるのではないかと思います。もっと身近に友達感覚で仏様を感じてもらえたら」と呼びかける。

『開創1150年記念 醍醐寺 国宝展』は、「大阪中之島美術館」にて8月25日までの開催。料金は一般1800円ほか、詳しくは公式サイトにて。

取材・文・写真/いずみゆか

『開創1150年記念 醍醐寺 国宝展』

会場:大阪中之島美術館 4階展示室
会期:2024年6月15日(土)~8月25日(日)(前期は~7月21日(日)、後期は7月24日(水)~)
時間:10:00~17:00(入場は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日、7/23(火) *7/15(月・祝)、8/12(月・休)は開館
*会期中、展示替えあり

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