万博×国際交流がキーワード、京都で視点を変えた「日本美術展」
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京都国立博物館 平成知新館 外観
大阪・関西万博が開催される2025年、「京都国立博物館」(京都市東山区、以下:京博)では、万博のテーマで謳う「持続可能な社会を国際社会の共創によって推し進める」に沿って、多角的な国際交流の視点から日本文化をとらえ直そうと特別展『日本、美のるつぼ―異文化交流の軌跡―』が開催される。
■ 古今東西の文化により形作られた「日本文化」
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同展は、「世界に見られた日本美術」「世界に見せたかった日本美術」「世界と混じり合った日本の美術」という3つ視点を軸に、国宝16件、重要文化財50件を含む、約200件の名品を今までのイメージとは異なる見方で楽しめる(出展件数は増減の可能性あり)。
ともすれば、島国という地理的な理由も相まって、「日本の古美術は独自性があるけれど、閉鎖的なイメージがあるかも」と思うかもしれないが、同展担当者は「実際の日本の古美術は、古今東西の芸術文化が混じり合い、ダイナミックに形作られてきました」と説明。「視点を変えることで見えてくる楽しさ」を体感できる点が、同展の見どころとなっている。
今まで固定イメージを抱きがちだった誰もが知る名品について、交流を軸にとらえ直すと新たに見えてくる横顔があるという。例えば、インバウンドに人気が高い浅草のお土産屋などでよく見かける葛飾北斎の浮世絵、なかでも「ビッグ・ウェーブ」で知られる『富嶽三十六景 神奈川沖浪裏』は、19世紀の万国博覧会で流行したジャポニスムの象徴的作品だ。
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その影響力はすさまじく、フランスの作曲家ドビュッシーの交響曲「海」やロダンの弟子で彫刻家のカミーユ・クローデルが制作した『波』などに波及している。19世紀のパリで不動の人気を得たことが、日本国内での北斎の再評価に繋がり、「海外との交流の中で日本美術の顔となった(世界に見られた)作品」とも言えるそうだ。
■ 実は…「万博」がきっかけだった!?
そして19世紀の万博で、美術作品・芸術作品として展示して欲しいという作品も制作され、日本に展覧会や博物館の考え方が輸入された。当時の日本美術は、欧米人の目を満足させるという側面が大きかったそうだ。
ほかにも興味深いことに、現代の私たちが一般的に認識している「日本美術史の原型」になった明治政府編纂による日本初の美術史『稿本日本帝国美術略史』の刊行も、実は万国博覧会がきっかけだった。明治33年(1900)のパリ万博参加が契機となり、先行でフランス語の『Histoire de l’Art du Japon』が刊行され、翌年に日本語版の同書が出された。
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同書は、国家の威信をかけて制作されたものであり、現在の国宝や重要文化財に指定されている文化財が多々掲載されているのが特徴だ。「世界に見せたかった日本美術」として、現存する日本最大の銅鐸『突線鈕五式銅鐸(とっせんちゅうごしきどうたく)』(重文)を日本の初期美術における金工の代表例のひとつとして、また日本の木像や塑像、銅像の起源として埴輪を紹介しており、日本美術に深い歴史があることをアピールしている。
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さらに同書では、「日本らしい美術表現」として、尾形光琳や酒井抱一などの琳派の作品も積極的に紹介。同書に掲載はないが、今では琳派を代表する作品として、教科書でもお馴染みであり、誰もが知る国宝の俵屋宗達筆『風神雷神図屏風』も実は明治時代後半になってから存在が知られるようになった作品だ。
それだけではなく、よくよく考えてみれば、実際の日本美術は、ペルシア・インド・中国・朝鮮半島など様々な異国の文化の影響のもとで形づくられてきた。その異文化交流を楽しむのが同展のメインテーマであり、改めて日本美術はおもしろいと思わせる作品が並ぶ予定だ。
同館の松本伸之館長は、「万博を機会に、改めて日本文化や歴史、我々日本人のことを知っていただき、我々自身にとっても自分たちのルーツや歩みを知っていただけたら」と呼びかける。
特別展『日本、美のるつぼ―異文化交流の軌跡―』は、「京都国立博物館」にて、2025年4月19日~6月15日に開催予定。詳しくは今後、展覧会公式サイトなどで発表予定。
取材・文・写真/いずみゆか
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