奈良でレアコラボ企画が開催中、聖武天皇即位1300年の記念年に

2024.10.27 08:00

秋期特別展「聖武天皇が即位したとき。―聖武天皇即位1300年記念―」の様子。「神御茵(かみのおんしとね)」の記載が初めて確認された木簡。茵(しとね)とは、寝たりすわったりする時の敷物のことで、大嘗祭が執り行われた大嘗宮にかかわる品の可能性がある

(写真9枚)

2024年は、奈良時代の聖武天皇(701年~756年)即位1300年の記念の年。聖武天皇ゆかりの「正倉院宝物」の一部が公開される『第76回正倉院展』の開幕に関連し、同じく奈良市内で「奈良国立博物館」と「奈良文化財研究所」による珍しいコラボ企画もスタートしている。なかには、一般初公開の作品も。

■ 初の一般公開へ、今年2月に出土

奈良国立博物館「なら仏像館」の特別陳列「聖武天皇の大嘗祭木簡」で奈良文化財研究所から貸し出し展示された今年2月に発見された聖武天皇の大嘗祭にかかわる木簡のうちエース級の8点

それが、今年の2月に平城京の発掘調査で出土し、一躍注目を集めた聖武天皇の大嘗祭(だいじょうさい)にかかわる「木簡」の一般初公開だ。「奈良国立博物館(以下・奈良博)」「なら仏像館」での特別陳列『聖武天皇の大嘗祭木簡』で実現し、これだけの規模で両組織がコラボするのは初だという。約2600点出土した木簡のうち、エース級の優品8点が出張展示されているので見逃せない。

あわせて、「奈良文化財研究所(以下・奈文研)」の「平城宮跡資料館」でも秋期特別展『聖武天皇が即位したとき。―聖武天皇即位1300年記念―』が同時開催され、1期2期あわせて約40点の聖武天皇の大嘗祭関連の木簡が初公開されている。

このコラボ企画について、奈良博の井上洋一館長は、「モノで聖武天皇を感じられる正倉院展の後に奈良博の仏像館へ、さらに、奈文研の平城宮跡資料館を訪れれば、木簡から、ここで生きた聖武天皇の生々しい歴史を実感できますので、ぜひ巡っていただけたら」と呼びかける。

それが「奈良国立博物館(以下・奈良博)」での特別陳列『聖武天皇の大嘗祭木簡』と、「奈良文化財研究所(以下・奈文研)」での秋期特別展『聖武天皇が即位したとき。―聖武天皇即位1300年記念―』。これだけの規模で両組織がコラボするのは初だといい、なかでも各館の注目作品は、2024年2月に平城京の発掘調査で出土し、一躍注目を集めた聖武天皇の大嘗祭(だいじょうさい)にかかわる「木簡」だ。

特別陳列「聖武天皇の大嘗祭木簡」の展示の様子(10月21日撮影)水漬け状態での木簡の展示は非常に珍しく、出土してから初の一般公開となる

大嘗祭とは、天皇が即位後に初めておこなう新嘗祭(にいなめさい/収穫した新穀を神に奉り、国家安泰、国民の繁栄の祈念する祭儀)のこと。木簡は、地下から出土した文字が記されている木の札(木片)で、当時を理解する上で重要な出土文字史料だ。この木簡は、両館あわせて初の一般公開となる。

■ 貴重な映像も、聖武天皇の人生をたどる展示

秋期特別展「聖武天皇が即位したとき。―聖武天皇即位1300年記念―」の様子。「大嘗」の文字が記載された4点の木簡のうちの1点。紐が付いた状態で水漬け展示されている木簡は非常に珍しい

これらの貴重な木簡は、出土してまだ半年ほどであり、保存処理をおこなう前の状態なので、今回のために開発されたケース内に納められ、保管のため管理が難しい「水漬け状態」で展示されている。長年に渡り、全国から出土した約6割もの木簡を保管し、調査研究を続けてきた奈文研の経験と実績があるからこその、貴重な展示といえる。

奈良博「なら仏像館」で出張展示されたエース級の8点について、奈文研の担当者は「『大嘗』の文字が確認できた4点のうち文字がはっきりしている2点や大嘗祭で神にお供えされた品名が記された木簡のなかでも、秋にちなみ栗や梨が記されたものを出しているので、親近感を持っていただけたら」と語る。

一方、聖武天皇が即位した場所「平城宮跡」にある奈文研「平城宮跡資料館」で展示されている初公開の木簡では、「神御茵(かみのおんしとね)」の記載が初めて確認された木簡や紐が付いた状態で出土した木簡などが注目だ。

紐は非常に脆弱で、時間の経過とともに崩れていくため、紐が付いた水漬け状態の木簡が一般公開されるのは非常にレアなことなのだとか。これらの木簡が出土した瞬間の貴重な映像も観ることができる。さらに、平城宮跡の発掘成果から、皇太子時代、大嘗祭がおこなわれた場所、治世下で起きた疫病や地震により仏教に傾倒し東大寺の大仏建立へ・・・といった聖武天皇の人生をたどる展示になっている。

同館の通常展示には、宮殿の復原コーナーがあり、調度品は正倉院宝物を複製したものなので、正倉院展の後に訪れれば、実際にどのように使われていたか実感が湧きやすい。今回のコラボ企画もあわせて訪れることで、普段より何倍も正倉院展や奈良県を楽しめるのではないだろうか。

正倉院展にあわせて、珍しいコラボを発表した奈良国立博物館の井上洋一館長と奈良文化財研究所の本中眞所長(10月2日の記者会見にて)。それぞれ、互いの組織のキャラクター「キュートぐみ【宮都組】」(奈良文化財研究所)と「ざんまいず」(奈良文化財研究所)を手に

このコラボの意義について奈良博の担当者は、「即位1300年目に、即位の儀礼である大嘗祭に関連する木簡が発見された奇跡。かつ、2月に出土したばかりで、保存処理される前の木簡がこんなにスピーディーに一般公開されることは非常に珍しいです。しかも、正倉院展にあわせて同時公開されるなんて、2度と無い機会です」と力を込める。

特別陳列『聖武天皇の大嘗祭木簡』は、奈良国立博物館「なら仏像館 第13室」で11月11日まで。一般700円ほか。正倉院展「日時指定券」でも観覧可能。秋期特別展『聖武天皇が即位したとき。―聖武天皇即位1300年記念―』は、奈良文化財研究所「平城宮跡資料館 企画展示室」で12月8日まで(無料)。木簡は1期(10月22日〜11月17日)、2期(11月19日〜12月8日)で展示替えあり。各詳細は公式サイトにて。

取材・文・写真/いずみゆか

データ

会場:奈良国立博物館 なら仏像館 第13室
会期:2024年10月22日(火)~11月11日(月)会期中無休
時間:9:30~17:00(入場は閉館の30分前まで)
※正倉院展会期中(10月26日~11月11日)の月~木曜日は午前8時~午後6時、金・土・日曜日、祝日は午前8時~午後8時

データ

会場:奈良文化財研究所 平城宮跡資料館 企画展示室
会期:2024年10月22日(火)~12月8日(日)
9:00~16:30(入館は16:00まで)※月曜日休館(祝日の場合は翌平日)

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