新味も! 大阪・箕面名物「もみじの天ぷら」食べ比べてみた
大阪・箕面と言えば何を思い浮かべますか?(テレビCM「箕面~温泉 スパァーガーデンッ♪」のサウンドロゴを歌ってしまう人は、昭和世代確定!)。そんな箕面市にある「箕面国定公園」の紅葉が、例年より遅い見頃を迎えようとしている。
箕面での紅葉狩りに欠かせないのが、銘菓「もみじの天ぷら」。編集会議中に「実は食べたことがない」というスタッフが複数いることが発覚。それを受け、箕面名物「もみじの天ぷら」を調査すべく、現地に急行した。
■ 外国人からも大人気、1シーズン10万枚以上揚げている
まずお話を聞いたのは「箕面市観光協会」。もみじの天ぷらの発祥について「約1300年前に、箕面山で修業していた役行者が、滝ともみじの美しさを賞賛して、自然の風味を生かした天ぷらを作り、修験道場を訪れる旅人に提供したのが始まりとされています。現在は、阪急箕面駅から箕面大滝に向かう道中に10店舗ほどもみじの天ぷらを提供している店がありますよ」とのこと。いきなり1300年! そんな歴史があることに驚いた。
続いて、もみじの天ぷらの「元祖」と言われている老舗「みのおこうえん桃太郎」の奥野さんにお話を聞いた。やはり紅葉の季節とあり、次々と店の前に足を止める人たちの姿が。海外の人も多く、「昔ははじめて食べた!って驚く人も多かったけど、今では海外でもネットとかで結構紹介されているみたいで『コレね』って感じで来店する人も多い」とのこと。
天ぷらを揚げている奥野さんの手元を覗いてみると、黄色い葉が並んでいる。「公園内でみられるイロハモミジやヤマモミジとは別の、天ぷらにする食用で栽培している『一行寺楓』を使用していて、秋の終わりに自分たちの畑で1年分を収穫しています。秋の紅葉シーズンと、収穫の時期が重なるから、今はとにかく忙しいです」。
その収穫した葉を、1年間塩漬けにして殺菌し、それをさらに油で揚げてもみじの天ぷらになるそうだ。こんなにもみじに囲まれた場所だが、提供している葉は食用のもみじを別途栽培していたということに驚き。ちなみに、1年で10万枚以上は揚げているんだとか。
「桃太郎」の創業は1901年。小林一三氏も携わった「箕面有馬電気軌道」(現在の阪急電鉄)が開業し、「箕面公園」駅として運用されたより前の話だ。
「うちが、もみじの天ぷらの元祖。開業当時は、この店だけポツンとあって、もみじの天ぷらを提供していた、みたいな話を聞いています。その後、電車が通って観光客が増え、店も徐々に増えたそうです」。今では平日でもかなりの人出があり、滝道には多くの土産物店などが集まる箕面公園にもそんな時代があったようだ。
店ごとに、揚げ方や粉の配合など含めて「企業秘密」の秘伝のレシピがあり、「桃太郎」の場合、原材料は、小麦粉、砂糖、ごま、もみじ葉、となっている。さらに手で鍋に入れたり、箸で入れたり、揚げ方ひとつとっても各店で異なり、油の切り方で味も微妙に違ってくるんだとか。
続けて奥野さんは箕面滝道沿いの今後を憂いていると話す。「もみじの天ぷらを提供する店も、高齢化が進んでいて毎年1店舗ずつくらい減っている。以前は何十という店が軒を連ねたが、今はシャッターを下ろしたままになった店も。そんなにもうからないのにハードで、なかなか後継者がいない。うちの店もそう。箕面市にも空き店舗の活用を相談に行ったりしてますよ。店と住居が一緒になったところが多いので貸すにも難しい部分もあるけど、新しいやる気のある人に出店してもらって、活気が出たらいいんだけど・・・」。箕面のような、連日多くの人で賑わう観光地でも後継者不足は深刻なのだ。
■ 独自路線を開拓!女性社長の新たな視点を活かした商品
一方、箕面駅のほど近く「久國紅仙堂 Cobeni」には、伝統的な銘菓のイメージを覆す「もみじの天ぷら」の商品が揃う。1940年創業の「久國紅仙堂」が、2020年から本店のすぐ近くで店内飲食も可能なカフェコーナーを設置し、若い女性たちも来店しやすい雰囲気の店舗を構えた。現在はスタッフ約20名の大所帯を抱え、もみじの天ぷらはじめ、さまざまなオリジナル商品を製造販売している。
こちらでは、ベーシックな伝統銘菓のもみじの天ぷらはもちろん、お土産や贈答用にも好評な「個包装」のもみじの天ぷらや、きなこ味や、黒糖、さらには塩、七味などさまざまなフレーバーの商品開発を行い、大人気に。地元の常連客は、帰省土産、年末のご挨拶などで買い求め、遠方からの観光客もこの店をめがけてくる人もいるそうだ。
代表の久國さんのこだわりが詰まったもみじの天ぷらは、紅葉シーズンには午前中に完売してしまうことも多く、取材中にも「もみじの天ぷらありますか?」と来店する人が後を絶たなかった。
久國さんにこうした新たな商品開発のモチベーションをたずねると、「伝統を守るために、新しいことに挑戦していくことが大事。うちがいろいろな味を開発してはじめて売り始めたとき、『伝統銘菓なのに』と当初は周りから良く思われてなかったみたい。とはいえ、誰からも求められなくなると、もみじの天ぷらは完全に終わってしまうという危機感があります。新たなフレーバーは目新しいだけではなく、素材にもこだわりました。例えば黒糖は徳之島のものを使用し、おいしさを追求しています」と答えてくれた。
「お客さんからの『こんなの食べたい』という意見も受け、新たな商品の試作を作ることもあります。『アレルギーの孫に、この味を食べさせたい』というお客様の声から、次は米粉のもみじの天ぷらにトライしたいという風に考えていて。ただ今は本当に忙しいので、落ち着いたら実現させたいですね」。これからも久國さんの新しいチャレンジは続いていく。
現地取材を終え、「桃太郎」と「久國紅仙堂」のもみじの天ぷらを編集部に持ち帰った。初めて食べるスタッフから「ほんのり甘くて、さくさくした食感がかりんとうや、沖縄のサーターアンダギーなどに似ている! もみじ感はちょっとだけ、感じるかな?」「食べたことないけど、なんか懐かしい味」「全然食感とか味は違うけど、もみじが和食の天ぷらの海苔とか、大葉みたいな役割?」などの意見が。
そして「2つのお店の天ぷらを食べ比べると、食感も味付けも結構ちがう」とのこと。せっかくの紅葉シーズン、箕面に行くならもみじの天ぷら食べ比べを楽しんでみては? 箕面公園のもみじ祭りは12月1日まで開催。
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