初日から長蛇の列!奈良博「超 国宝展」、色んな意味でスゴかった

国宝 観音菩薩立像(百済観音)飛鳥時代(7世紀) 奈良 法隆寺 通期展示
大阪・関西万博開幕と開館130年を記念し、奈良国立博物館(奈良市:以下、奈良博)で開館130年記念特別展『超 国宝―祈りのかがやき―』が開幕。初日の4月19日には、開館前から長蛇の列ができるほど、話題を集めている。
日本で2番目に古い国立博物館である同館は、長年、仏都奈良に根差し、「仏教美術研究センター」としての役割を担ってきた。そのため、「仏教美術の殿堂」と呼ばれており、同展は、その力を十二分に発揮して仏教・神道美術に特化した超充実の内容だ(国宝112件、重文16件の計143件)。館としてもこれまでで最大規模の「国宝展」だという。
ところで、気になるのは、タイトル「超 国宝(英語タイトル:Oh!KOKUHO)」の「超(Oh!)」ではないだろうか?「奈良博はふざけているんじゃないかという声もいただきましたが、私たちは『超』真面目でございます」と井上洋一館長。「この展覧会を観ずして、仏教・神道美術を語ることなかれと心から思っている」と力説するほど、研究員が選りすぐった誰もが一度は教科書などで目にしたことがある国宝中の国宝が多い。
■ 国宝を「超えて」すばらしい!あえて文化財も

しかし『超』には、もっとさまざまな意味があるのだという。そのため、『あえて国宝以外の文化財』も展示されているのだとか。一体どういうことだろうか?
『超』には、「先人達から受け継いできた祈りや文化の灯(ともしび)を『時代を超えて』次の世代へ繋いでいく心こそが宝である」という意味が込められているとともに、同展担当の岩井共二美術室長は、「国宝という文化財指定の枠を超えて、国宝以外を含めて我々(研究員)が選んだすばらしい超国宝を紹介するという意味もあります」と説明する。
その選定は、「時代を超えて未来に伝えるべき文化遺産であり、且つ、奈良と奈良博の歴史上特に意義深いもの」を基準としている。その代表的なものとして注目の作品が8つの顔を持つ不思議な…異形のお面「八雷神面(はちらいじんめん)」(奈良・華厳宗元興寺)だ。

あごの部分で上下セパレートになるお面で、実際に8つ顔があるので、現地でぜひ数えて確認してみてほしい。奈良の元興寺(がんごうじ)には、「がごぜ(がごじ)」と呼ばれる鬼の伝説があり、この八雷神面は、平安時代の『日本霊異記(にほんりょういき)』に登場する道場法師が元興寺の鬼を退治する時の姿とされる。
実は、奈良博に寄託されてから、長らく収蔵庫の奥で眠っており、存在が忘れ去られていたという。同品は、「奈良博誕生」のきっかけとなった明治8年(1875)に東大寺大仏殿とその回廊を会場に開催された「奈良博覧会」に正倉院宝物などと一緒に出陳されていたことが判明している。
その発見のきっかけが、イギリス王室(ロイヤル・コレクション・トラスト)が保管する「奈良博覧会」の古写真だった。この八雷神面が鎌倉時代のユーモラスな鬼の像で、国宝「天燈鬼(てんとうき)立像」「龍燈鬼(りゅうとうき)立像」(奈良・興福寺)と一緒に写っており、「真ん中に写るこれはなんだ?」となり、奈良博にあったと気付いたのだという。

近世の元興寺では、版木が残るほどお札もつくられ、「雨乞い」「厄除け」としてものすごい信仰を集めていたことが、近年の元興寺文化財研究所の調査で分かっており、歴史民俗学的に価値があるので、今後更に注目を集めそうだ。
■ 法隆寺のミステリアスな国宝を360度で
その他にも、奈良県内の名だたる大寺の国宝が目白押しで、特に日本で初めて世界遺産登録された法隆寺の文化財は見応えがある。なかでも、横から見るとS字を描き、細身で天に伸びるような長身の独特な姿が印象的な法隆寺の「観音菩薩立像(百済観音)」は、なんと360度から拝観することが可能。

明治30年の開館当初の頃から、昭和5年くらいまで、入り口の巨大なガラスケースで展示されていたという奈良博130年の歩みを代表するような像で、記録があまり残っていないミステリアスな像でもある。
一般的に知られる「百済観音」の名称も奈良博での展示を観た『古寺巡礼』の著者・和辻哲郎が名付けたとされる。会場内で上映されている8K映像では、近影の柔和な表情や彩色など、細部まで余すことなく観ることができるのでお見逃しなく。

明治期の神仏分離令までは、仏教と神道は神仏習合されていたので、神道美術も必見だ。日本最古の神社のひとつ「石上神宮(いそのかみじんぐう)」のご神宝で唯一無二の形状を持つことから、ユニークグッズ化された異形の鉄剣「七支刀(しちしとう)」や薬師寺の鎮守社「休ケ岡八幡宮」に伝来した天平美人画「吉祥天像(きちじょうてんぞう)」など、教科書でおなじみの作品を目の当たりにできる。


また、現在の東大寺大仏殿と大仏は、江戸時代の再建であり、過去二度の兵火で焼失しているのだが、平安時代以前の大仏の姿が描かれている唯一の絵画資料で日本三大絵巻のひとつ「信貴山縁起絵巻 尼君巻」などの展示もあり、色々な意味で「超 国宝」ばかりだ。

■ 国宝より僕宝? 自身が価値を認めた推しを
最後に岩井さんは、「国宝だからすごいのではなく、すごいものだから国宝になっています。(仏像ファンで知られる漫画家・イラストレーターの)みうらじゅんさんが仰っている『国宝より僕宝』のように、自分自身が価値を認めた自分の推しをみつけて欲しい」と話してくれた。
開館130年記念特別展『超 国宝―祈りのかがやき―』は、6月15日まで(前期が5月18日まで、後期が5月20日~6月15日まで)。一般2200円、高大生1500円、中学生以下無料。各詳細は公式サイトにて。
取材・文・写真/いずみゆか
開館130年記念特別展『超 国宝―祈りのかがやき―』
会場:奈良国立博物館 会期 東・西新館
会期:2025年4月19日(土)~6月15 日(日)
休館日:毎週月曜日、5月7日(水)
※ただし、4月28日(月)、5月5日(月・祝)は開館
時間:9:30~17:00(入場は閉館の30分前まで)
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